短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】4 (ページ18)

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虎鷹ページ18

あの日以来、俺に懐いてくれる後輩が出来た。
今までも慕ってくれる後輩は何人かいたが、このチームでそういう存在ができるとは思っていなかったから、少しばかりこそばゆい気持ちになってしまう。

「飛鷹さんー！今から少しだけ一緒に練習しませんか？」

「…ああ」

厳しい練習を終え、美味しい料理に満腹感を覚え、一服しようと自室の席に着いた時、彼は懐っこい笑顔を浮かべながら、ボールを抱え自室にやってきた。
特に断る理由もなく、またもっと上手くなりたいと向上心に燃える自分自身にとって、彼との練習は必ず良い結果へと繋がると思い、立ち上がり、そして彼とグラウンドへ向かった。

「じゃあ行きますよー！」

「おう」

ポーンと蹴られたボールは吸い寄せられるように自分の足元へやってくる。彼は自分よりもいくつか年下ではあるが、サッカーの実力は本当に頭が上がらない。上手く彼の元へボールを返そうと、ポンっと蹴りあげるが、なかなかコントロールが上手くいかず、何処へと飛んでいってしまう。だけど、それも予測済みと言わんばかりにその場所に辿り着き、「ナイスパスです！」なんて声をかけられながら何度もその行為を繰り返す。

「本当にお前は上手いな…」

「えへへ、ありがとうございます」

嬉しそうに頬を緩めて笑う彼。その素直さがなんとも可愛らしいと思えてしまうのは、自分のことを送り出してくれた後輩たちと重ねたこともあるからだろうか。
こんな初心者の俺にも声をかけてくれるくらいには彼は素直で優しい子だ。

「飛鷹さんもすごく上手くなっていますよ！」

「そんなことは…」

「俺があるって言ったらあるんです！」

「そ、そうか…」

彼の勢いに圧倒されながら思わず頷いてしまうが、自分では本当にそうだとは思えてはいなかった。なぜこのチームに居るのかと未だに疑問を抱いてしまう日もあった。

「飛鷹さんは本当にすごいですよ」

「えっ？」

「俺、飛鷹さんのこと大好きなので、もっと一緒にプレイしたいなって思うんです。だからこれからもずっと勝ち続けるために、貴方の力になりたいって思うんです」

「と、虎丸…？」

「えへへ、言っちゃった」

ペロッと舌を出して、頭に手を当てて照れ臭そうに笑う彼に動揺してしまう。
すると彼はボールを手に取り、こちらへと近付いてきて、一言。

「飛鷹さん、大好きです。これからももっと一緒に練習しましょうね？」

その言葉に頬を赤める以外の選択肢は与えられなかった。