短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】4 (ページ16)

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吹雪兄弟（吹雪家）ページ16

空は快晴。目の前に広がる青色の海は、太陽の光に照らされて、キラキラと輝いている。

「兄貴ー！早く早く！」

久しぶりの海にテンションが上がっている弟は、朝からずっと楽しそうだ。

急かすようにグイッと腕を引かれれば、柔らかい砂浜に足を踏み入れることになる。太陽の光で熱くなったその砂には、二人分の足跡。躓きそうになりながら、彼に導かれるままに海へと足を踏み入れれば、先ほどまでの熱とはうってかわって、冷たい水を足先で感じることになる。

「アツヤってば、そんなに急がなくても海は逃げないよ？」

「んなことは分かってるけど！でも楽しみにしてたんだよ！」

「…ふふ、そっか」

「何笑ってんだよッ！」

「んー？僕の弟が可愛いなあって」

「…っるせぇ、」

ぷいっと拗ねたようにそっぽを向いてしまう彼とそれを見て楽しそうに笑う僕。

なんだかんだいって僕も彼と海に来ることは楽しみにしていたのだ。

そっぽ向いてしまった彼に、こちらに意識を向けさせるようにと手に掬った少量の水を投げてやる。すると、そっぽを向いていた彼の身体に冷たい水がピシャリとかかった。突然の冷たい水にピクリと肩を揺らすとこちらに視線を寄越す彼。その顔は、思いのほか楽しそうに笑みを浮かべていて。

「やったな…！」

仕返しといわんばかりに水を僕の顔に向かってかけてくる弟。その水を避けきることが出来ずにパシャリとかかってしまえば、塩の味が口の中に広がった。

「わわっ」

「はは、兄貴ったらトロくせぇ」

「もーアツヤ、しょっぱいんだけど？」

「んなこと知ったこっちゃねぇな」

ケラケラと笑う彼にもう、と少し頬を膨らませては更に仕返しにと次は顔に向かってその水を掛けてやる。

しかし、それはさすがに予測済みだったのか。ひょいっとその水を躱して、自慢げに笑うアツヤ。なんだかそれが悔しくて、それでいて楽しくて。しばらくの間、ふたりでキャッキャッと水を掛け合っていた。

その姿は年相応か、それともそれより少し下か。男子中学生ふたりの楽しそうな風景に、彼らを海に連れてきた両親ふたりは、その姿を遠くから眺めては、微笑ましいと頬を緩めた。

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