傲慢 ページ16
◆中也side◆
「中也君
中也君の事、知りたいな…」
暫くしてAが沈黙を破った。
「俺の事?」
「うん、何をして居る人か、今までどんな人生を送ってきたか…」
「俺は…」
何も云えなかった。
俺は、俺の全てを云ったらAは何を思うのだろうか。
俺の事が怖くなって、嫌いになって、離れていく。
彼女は俺が何をしていて、どんな人生を送ってきたと思って居るのだろうか。
爆弾やテロから人を守る様な自衛隊や警察官だろうか。
そうして今まで何人も救ってきて、立派な職に就いて。
或いは俺も、そういった人生を送る事も出来たのかも知れない。
でも、真実は違う。
“異能力”を使って邪魔者を徹底的に潰して、
今まで何人もの人を殺してきた。
殺しの実績で立派な職に就いて。
挙げ句俺は………。
俺は此の仕事に、プライドを持っている。
Aなら、其れをちゃんと伝えれば、嫌いには成らないだろうし、離れても行かない…筈だ。
其の考えを、人は“傲慢”と呼ぶ。
しかし、今だけは“信頼”と呼ばせて欲しい。
でなければ、きっと俺は
Aに真実を話せない。
「俺は──化け物だ」
話し始めはそんな言葉からだった。
話途中、Aは相槌も打たずに唯じっくりと耳を傾けていた。
話し終わると
「そうだったんだね」
と噛み締める様に一言呟いた。
「わたし──中也君の事を知れてよかったよ」
Aの言葉に他意は無かった。
俺も二十歳に成り、整理の着いていたからだろう。
下手な憐れみよりも、ずっと心地よかった。
俺の傲慢は、傲慢何かじゃなかったと思うと、少し安心した。
「なぁ、Aの昔話も聞かせて呉れよ。
──俺との、昔話」
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時