暴力とは生きない ページ4
これは、十四年前のお話し。
わたしが五才の頃のエピソオドだ。
―――
わたしには、ある不思議な力があった。
其れが“異能力”だとは知らなかった。
誰もがそうだと…わたしが何かを食せる様に、皆が持っている“機能”だと思っていた。
何故、そう思っていたか。
理由は簡単。
わたしが生まれて間も無く両親は死んだからだ。
四歳頃
わたしは叔父母に引き取られていた。
保障された最低限の衣食住。
保障されない身の安全。
叔父母揃ってわたしに暴力を振るってきたのだ。
其れもその筈。
叔父母とわたしの父母は、元々仲が悪かったそう。
引き取られたのは母方の姉の家だが、彼女は元々子供が出来ない質で在った為、わたしを何一つの難もなく産んだ母を妬んだ。
あれ?妊娠って辛いんじゃ…?
そうかもね、でもその辛さを感じられる丈、辛さ以上の幸せを感じられる丈…。
妬みはしたが、わたしが生まれてからは、割りと丸くなったらしい。
子育ては大変だろうけど頑張りなさいよ。
その叔母の言葉以来、二人の仲は急激に良くなり、子育てが一段落着けば二人で何処かへ遊ぶ予定でも居たそうだ。
しかし──母は死んだ。
叔母は云った。
貴方の所為で妹は死んだ!
怒鳴ってわたしを殴りながら叔母は涙を流していた。
「ご、ごめんなさい…」
「謝ったって!妹は!帰ってこないの!」
「お母さんは…」
「妹は、貴方の所為で死んだの」
「ごめんなさいごめんなさい!」
幼いわたしも涙で顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
訳も分からず、しかし、母がわたしの所為で死んだ事だけは理解して謝った。
何度も、何度も謝った。
そんな叔母だが、絶対に三度の飯は抜かさなかった。
どれだけ殴った後でも
「ご飯食べるよ」
とイラッとした声で呟くのだった。
それが叔母の奇妙な愛情のかけ方だったのだろうか。
……痛かったが。
少しひねくれていただけで、唯の母親代わりだったのだろうか。
………苦しかったが。
そして、決めた。
わたしは暴力とは生きない、と。
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時