41話 ページ42
タイムアウトがとられる
「大丈夫、いけますよ。こういう時こそ気合いです」
黙り込んでいるみんなを見て、焦ったように犬岡が言った
「おう!」
「だな」
山本と海が言うも、みんなはまた黙り込んだ
「ねぇ、テンション下げすぎ。大丈夫なんじゃない?」
研磨の言葉に黙り込んでいたみんなは目を見開く
「芝山」
「はい」
「後衛はリエーフとだけ変わって」
研磨が言った
「そうだな、俺とは交代なし。後衛に回っても俺が入る」
黒尾の言葉に芝山は俯く
「はい!」
しかし、すぐに顔を上げた
「いっつも良いとこ、夜久パイセンに持ってかれるんでね。たまには主将にもかっこいい仕事させてちょうだいよ」
そう言って胸に拳を当て、黒尾は笑った
夜久の手当をしていた陽奈はその姿を見て、ギュッと胸が一瞬苦しくなる感じを覚える
しかし、本当に一瞬だったため、陽奈は呼吸を整えるだけで気にかけなかった
試合が始まり、黒尾はいつになく気合が入っているように見えた
夜久がいないからだろう
陽奈は徐々に、徐々に、黒尾のその姿に鼓動を支配されていくようだった
「陽奈」
名を呼ばれ、ハッとして夜久を見る
「そんな風に見なくてもあいつらなら大丈夫だ」
夜久はそう言って笑った
『心配はしてません』
陽奈は真面目に言い、夜久はその言葉に嬉しそうに笑った
「視線!飛ばしすぎ!」
「ドシャッと!」
観客が沸きあがる
夜久が振り向いた
『夜久さんは動かないでください』
足を氷で冷やしていた陽奈は思わず言った
芝山が大将のサーブを拾い上げ、デュースに持ち込む
夜久は嬉しそうな顔で拳を握る
夜久さんは本当に優しい先輩だ
陽奈はその姿に微笑んだ
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作者名:サンマ | 作成日時:2021年10月26日 21時