35. 真実 ページ36
屋敷に入ってリビングのソファに座って数分間、それだけ経っても2人は何も喋らず、相手の顔さえ見なかった
カチコチと大きな振り子時計の音だけが異様に響いている
沈黙を破ったのはAだった
『真実を知りたい』
そう呟いた声にシリウスはAの方を心配げに見つめた
｢私は……｣
シリウスは戸惑うように呟く
『お願い、クリフ』
シリウスの答えは気にせずにAが名を呼んだ
しばらくしてクリフが申し訳なさそうな顔をしてAとシリウスが座っているソファの目の前に現れた
その姿に目を止めると、Aは悲しげに微笑み、シリウスは戸惑ったように居住まいを正した
｢A、Aお嬢様！申し訳ありません！クリフは黙っていなければいけなかった！それに、話してしまったのだから死ななければならなかった！それなのに、クリフは全てを守れなかった！こんなに最低な屋敷しもべ妖精は他にいないでしょう！｣
そう言ってワッと泣き出したクリフにAとシリウスは困ったように顔を見合せた
シリウスが最後に見た時よりクリフの傷は酷くなっている気がしたし、Aもその姿を見て、この姿こそがクリフの話を真実だとする証拠なのではないか、と心をギュッと握り潰された感覚に陥った
『クリフ……私が主人だということは、今の私の命令を、聞いてくれるのね？』
Aの言葉にクリフの泣き声がピタリと止み、クリフは戸惑いながらもAを見上げておずおずと頷いた
｢そ、そ、そうでございます。で、ですが……クリフは、お嬢様は…それをお望みにならないと｣
『今の私は望むわ。クリフ……私の真実を知りたいの。私はミルキーウェイの生まれ変わりだと思い込んでる……これは……本当なの？』
Aは意を決してそう聞いた
シリウスは眉を寄せてクリフを睨みつけるようにして答えを待ち、クリフは目を右往左往させてから命令だという先程の言葉通り口を開いた
｢本当でございます｣
その言葉にAの今までの全てが崩れ去る音がした
噛み合って正常に回っていたはずの歯車たちは全て虚像と化し、それまでAが正常だと思っていた歯車たちは大きな音を立ててバラバラに砕け散り、灰になるかのように消え去ってしまった
そしてAは悟るのだ
もう、無視をすることは不可能だと
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サンマ(プロフ) - ユズナさん» 予想外な作品を作りたい衝動に駆られました！そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございました！ (2023年4月30日 19時) (
レス) id: e98e7ad213 (このIDを非表示/違反報告)
ユズナ - はじめの方から読んでて、最初は普通の転生物かなぁと思っていたらめっちゃ予想外すぎて面白かったです！神過ぎません？最後めっちゃ泣きましたよ！？こんな素晴らしい小説を作ってくださりありがとうございます！ (2023年4月30日 4時) (レス) @page49 id: d0e30b129b (このIDを非表示/違反報告)
サンマ(プロフ) - 音乙さん» ありがとうございます。とっても嬉しいお言葉です！最後までよろしくお願いします！ (2023年4月2日 16時) (レス) id: e98e7ad213 (このIDを非表示/違反報告)
音乙(プロフ) - どうしよう、勿論キャラとシリウスの絡みも最高だけど、何より謎の真実がめちゃくちゃ気になって一気読みしました、最高です。応援してます！ (2023年4月2日 11時) (レス) @page36 id: c1b7932ddf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サンマ | 作成日時：2023年3月28日 16時
