Saving grace ページ5
視力を失ってから改めて思うが、人間とは本当に不思議なものだ
あんなに慣れなかった盲目の生活は数ヶ月過ごしただけで、音や匂い、窓からの光の加減で朝や夜が分かるようになった
五感の1つを失うと、他がとんでもなく機能するようになるらしい
Aが好きだったヒーロー漫画でも同じようなヒーローがいたが、その人は五感が優れてるどころじゃなく、もう犬並みだったけれど……
そんなことを思い出しながらAは1人でクスクス笑った
そんな中で聞き慣れない足音が扉を隔てた廊下の方から聞こえてくるのに気がついた
コンコンコン
そして優しげなノックの音
あの女でないことは足音で分かっていたので音だけで誰が来訪するかまで分かるのか、と今更ながらに気づいたAは驚愕で返事をするのが遅れてしまった
『はい？』
Aは慌てて、しかし平静を装って応える
扉が控えめに開かれた
｢やぁ、初めまして。わしはアルバス・ダンブルドア。ホグワーツの校長じゃ｣
Aはそのセリフに驚いて顔を上げ、思わず目まで開いてしまった
あの女に焦点があってなくて不気味 だからやめろ、と怒られて以来開けてこなかったのだが、今は流石に驚きのせいで開けてしまった
｢やはり…｣
ダンブルドアは目が見えないと分かっていたかのような口振りで呟くと、ベッドにいたAに歩み寄ってきた
｢こんにちは、わしはアルバス・ダンブルドアじゃ。握手しても良いかの？｣
ダンブルドアの言葉にAは遠慮がちに頷き、手を声のした方へさ迷わせる
その手はしっかりとダンブルドアの皺が多い、けれど戦士のように力強い手によって握られた
｢ふむ、呪いの一種じゃな。こういうものは魔法が発現すれば無意識的に治してしまう子がほとんどじゃが、わしでも無理となると……｣
ダンブルドアはそう言うと、Aの手を撫でてその手を離した
Aは離された手に寂しさを感じた
ここ数ヶ月、女以外に話してくれる人はおらず、隔離された空間でずっと生きてきて、希望はこの世がハリポタで、自身がホグワーツに入学出来るかもしれない、という不確定要素だけだった
さらに言えばあの日から数えて、今日は8月30日
それなのに一向に頼りがなかったのだから、絶望に呑み込まれそうだったのも否めない
そこに救いの手が差し伸べられたのだから、もう少し温かさを感じていたかったとしてもおかしくは無いだろう
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サンマ(プロフ) - 小夜さん» ありがとうございます。盲目を書くのは私も初めてなので、表現しきれてないところもあると思いますが、最後まで読んでくれると嬉しいです！ (2023年1月3日 21時) (
レス) id: e98e7ad213 (このIDを非表示/違反報告)
小夜 - 盲目の夢主の小説初めてです！本当に綺麗で素敵な物語で、読みながら夢主の感じてるものがすごく伝わってきます！！シリウスの良い所もすっごく出てて大好きです！！応援してます！(: (2023年1月3日 14時) (レス) @page35 id: e0f7d925b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サンマ | 作成日時：2022年9月4日 22時
