〈ツイステ〉海と花束 (ページ33)

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『過保護にも程がある！』-1話ページ33

「だーかーらー！…ついてこないでってば！」

「そう言われましても。アズールに言いつけられていますので」

朝、僕はいつも通り教室へ続く廊下を
歩いていた。
1年生しかいない廊下に、2年生のジェイドが
いるのもいつも通り。
この会話も、いつも通り。
毎日登下校を監視されるのはとてもストレスだった。

僕が怒鳴っても、ジェイドは楽しそうに
笑って「アズールに言いつけられている」
と言うだけ。
アズールもなんのためにこんなお守りみたいな
ことをさせているのだろうか。
聞いても答えてはくれず、決して辞めてくれないのだ。

とにかく、彼が一緒だとこの廊下では
ものすごく目立ってしまった。
ジェイドは2年生で先輩、
しかもオクタヴィネル寮副寮長。
…おまけに背が高い。
ジェイドのことを知らない1年生など居なかった。
そんな彼が一緒だと、僕にも注目されてしまう。

イライラしながら早足で廊下を進む。
「1年A組」の前へ到着したところで、
ジェイドを振り返った。

「ほら、もうついたから！ご苦労様！」

「はい。A、また後で」

冷たくあしらったつもりなのに、
やはりジェイドは楽しそうにしていた。
まったく、彼の考えていることは本当に
分からない。
僕はジェイドの後ろ姿をしばらく眺めてから
教室へ入った。

「お前…大変だなー」

「おはよう、みんな…。なんかもう慣れちゃったけどね…」

仲の良いクラスメイトたちはもう全員教室に揃っていた。
僕が席に着くと、後ろの席のエースが
気の毒そうに話しかけてくる。

「なんであんなに過保護なんだろうね…？」

「寮長の弟は大変なんだゾ…」

次に話しかけてきたのは、僕の隣席の
ユウとグリム。
まだ皆にはアズールとの関係を話していないため、
弟ということになっている。

…朝からクラスメイトに心配されまくってしまった。
僕は「はは…」と苦笑いすることしかできなかった。

「血の繋がった兄弟の頼みなら、聞いてくれるんじゃないのか？」

「それが…何回も怒ってるんだけどやめてくれなくて…」

エースの隣席、デュースが言った。
朝から疲労困憊の僕を流石に心配したのか、
仲の良いクラスメイトたちは
う～んと何か考えてくれているようだった。

そんな中、エースが突然「あっ」と声を上げる。

「じゃあさ、"やめてくれるまで口聞かない作戦" とか、どう？可愛い弟から無視されたらブラコン兄貴はひとたまりもないと思うんだけど！」