〈ツイステ〉海と花束 (ページ23)

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『散々な入学式』-1話ページ23

鏡の間へ向かっている途中学園長が色々と説明をしてくれていたが、やはりユウは「意味が分からない」と言った様子だった。

そうこうしている間に、目的地へと近づくにつれて話し声が聞こえてきた。

「それにしても学園長はどこに行っちゃったのかしら？式の途中で飛び出して行っちゃったけど…」

「職務放棄…」

「腹でも痛めたんじゃないか？」

学園長に対してとは思えないくらいの言われようで思わず苦笑いしてしまう。

「違いますよ！」

学園長が扉をバンッ！と勢いよく開いた。
中は綺麗に列に並ばされている新入生で溢れかえっていた。
一斉にこちらに視線が集まり、僕は咄嗟にフードで顔を隠す。

( 今までの問題がバレたら絶対アズールに怒られる… )

僕が正座させられてアズールに説教を浴びせられている図が安易に想像できてしまう。
思わず身震いをした。

僕たちは学園長に続いて、視線を浴びる中部屋へ足を踏み入れた。

「まったくもう。新入生が2人足りないので探しに行っていたんです」

大きな鏡の前へと僕たちを誘導すると、学園長は横へ退けてしまった。

「さあ、寮分けがまだなのは君たちだけですよ。狸くんは私が預かっておきますから、早く闇の鏡の前へ」

たまたま先頭に居た僕が先に鏡の前へ立つことになった。
今から何が起こるのだろうとどきどきしながら鏡を眺める。

ボウ…と、緑の炎に包まれた仮面が浮かび上がった。
そしてゆっくりと僕に語りかける。

「汝の名を告げよ」

( 名前…！？ )

僕は一瞬焦ったが、「ごほん」と咳払いをして平静を装った。
今周りに名前がバレるわけにはいかないのだ。
「あ、入学式でやらかしたアーシェングロットじゃん」とでも覚えられてしまったら…！
全身から血の気が引くのを感じた。

「………A、です」

鏡に近づいて出来るだけ小声で言う。
側から見たらおかしな行動だろうが、名前を普通の声で言って素性がバレてしまうよりかはだいぶマシだった。

「A……汝の魂のかたちは……――」

「………どーも！」

ぺこりと頭を下げて鏡の前から退ける。
闇の鏡に告げられた通り、オクタヴィネル寮の列の最後尾に並んだ。
勿論、顔はフードで隠しながら。