〈ツイステ〉海と花束 (ページ15)

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2話ページ15

返事をする隙も与えてもらえずに放り出されてしまった。

Aはため息をついて、渡された貝殻を眺めた。
貝殻には丁寧な線でわかりやすく地図が書かれている。
しっかり者のジェイドらしい綺麗な線だった。

「よし」と意気込んで、地図に書かれている通りに泳ぎ出す。
ずっと真っ直ぐに進み、右へ回り、今度は左へ回って、青色の珊瑚礁の間を抜ける。

「……ここで合ってるんだよね…？」

Aはたどり着いた場所に立ち尽くした。
辺りは真っ暗で、どんよりとした雰囲気を醸し出している。
何度も地図を見直すが、やはりここで間違いないようだ。

「あの～…アズールさ～ん…？」

おそるおそる呼んでみる。
するとすぐに、奥の方でガタリと物音が聞こえた。
…アズールだろうか。

「…いるの？」

音のした方へ向かうと、そこには古びた壺のようなものがぽつんとひとつ置いてあった。
ここがアズールの住処なのだろうか。

そっと中を覗き込む。

「そこにいるのは誰です…！？」

中からアズールの声がして、Aは顔を明るくさせた。
思ったより元気そうな声をしていたので、内心ホッとする。

「Aだよ、…アズール、体調大丈夫？」

「……」

返事は無い。
心配になって、壺の縁に手をかけて中に体を侵入させた。

その瞬間だった。

「…！見ないでください…！！」

アズールの声と共に壺の中から吐き出される黒。
Aは驚いて、咄嗟に壺から距離を取った。
吐き出された黒があたりの珊瑚を染めてしまう。
染まってしまった珊瑚を指で撫でると、黒は思ったよりも簡単に取れた。

黒色の正体は、墨だった。
アズールが魔法で出したものだろうか。

「…ねえ、見ないでって何を？」

いつもとは違って少し子供みたいな雰囲気のアズールに、Aは優しく声を掛ける。

暫く沈黙が続く。
そして再び壺の中から声がした。
次は、先程よりも弱々しい声。

「……僕の本当の姿は醜いんです。貴方もきっと幻滅します」

その声は震えていた。

そこでようやく分かった。
アズールが今まで陸の人間の姿で生活していた理由が。
自分の本当の姿が嫌いだったんだ。

「…受け入れるよ。だって、それが本当のアズールなんでしょ？」

再び訪れる、鼓膜を圧迫するような沈黙。
Aは急かすことはせずに、アズールのペースに合わせて黙り込んだ。

彼の弱いところまで知りたい。
そう思うのはわがままだろうか。