〈ツイステ〉海と花束 (ページ14)

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『蛸壷の中』-1話ページ14

「あれ…… アズールは？」

最近、遊びにくるのはこの双子だけだった。
嫌という訳では無いし、遊びに来てくれるのはとても嬉しい事なのだが。
アズールが来ない日はそう珍しくもない。
勉強熱心な彼のことだ。
夢中になって魔法のことを勉強しているのかもしれない。
だが 3日も顔を見ていないと心配になる。

「学校にも来てなかったよ～」

「体調不良と聞いていましたが…少し心配ですね」

ジェイドは少し考え込んでいる様子だった。

アズールは体調不良だったのか。
3日も学校を休んだなんて珍しい。

「…そうだ。A、アズールの様子を見に行ってきてくれませんか？」

「え… 僕が？」

「じゃあ俺もついてく～！…って、なんで止めんの」

Aを引っ張って連れて行こうとするフロイドを、ジェイドが手で止める。
フロイドはあからさまに不機嫌になってしまった。
Aはジェイドが止めた意味が分からなくて首を傾げていた。

「散歩がてら行ってきたらどうです？…またストレスが爆発して飛び出してしまったらいけませんし」

ジェイドは悪意に満ちた顔で笑った。
…正直、あの日のことは恥ずかしくて思い出したくない。
Aは顔を真っ赤にして黙って俯いた。

「…それに、きっとアズールも貴方が来てくれた方が喜びます。あ、道はお教えしますので」

簡単な地図を書いた貝殻を渡して返事を待たずにAをぐいぐいと外へ放り出してしまった。
アズールのもとへ向かって泳ぎだしたことを確認すると、ジェイドは「ふう」とため息をつく。

「ねえ、なんで一人で行かせたの」

「俺も行きたかったのに」と口を尖らせて言うフロイド。
気分屋の兄弟は、今はAと遊ぶ気分だったらしい。
フロイドには可哀想なことをしたな、と少し申し訳なく思った。

「なんだか楽しいことが起こりそうだったので」

「…！なんかジェイド、悪い顔してる」

…無意識だった。
フロイドに言われて、ジェイドは自分の口を手で覆った。

以前は復讐に燃えていたアズールが、Aの影響で少しばかり丸くなったような気がする。
彼に振り回されるアズールを見るのはとても面白かった。
だから、彼を行かせたらきっとまた楽しいことが起こるに違いない。

ジェイドは嬉しそうに口を歪めた。