6話 ページ13
「ぼっ、僕は焦ってなんかいませんから!」
「…アズール、」
「貴方が記憶を取り戻して故郷へ帰っても僕は別に、―」
「アズール!」
Aは、そっぽを向いて眼鏡を掛け直すアズールの手を再び握る。
驚いてAを見ると、ビー玉のような瞳に余裕の無い自分の顔が写り込んだ。
「僕、記憶が戻ってもアズール達と居たい!…いいでしょ…?」
そんな上目遣いで言われたら断れない。
…というか、わざとやってるのかそれ(上目遣い)は。
アズールは思わず顔を赤くしたが、またいつものような自信に満ちた顔をする。
「アズールは本当に素直じゃないな」と、双子は笑った。
「まったくしょうがないですね。いいでしょう。…さあ、帰りますよ。…A」
「うん…!」
アズールは 解かれた手が少し寂しいような気がした。
だが今はそんなこと気にも留めない。
Aはこれからもずっと側にいるのだ。
今はそれだけで充分だった。
最初は、ひとりぼっちのAが自分の姿と重なって見えて、同情していただけだった。
それだけだったのに、今はどうしてもこの美しい人魚を手放したくないと、側に置いておきたいと思ってしまう。
今までに無い感情に、アズールも少し戸惑っていた。
「あ!」
帰路についたところで、突然フロイドが声を上げる。
何かを思い出したような顔をしていた。
「これ、忘れてた」
「……僕に?」
フロイドが差し出したのは黄色い小さな珊瑚。
Aはその煌く珊瑚を受け取ると、目を輝かせてフロイドを見上げた。
「すごく綺麗…!フロイド、ありがとう!」
「いいよお。ねえねえ、それ付けてみて?」
「うん!……あ、あれ?どうやって付けるんだろ…?」
珊瑚を髪にひっかけてみるがなかなか上手いようにいかない。
するとAの手が誰かに掴まれる。
…ジェイドだ。
そういえば、ジェイドは手先が器用なのだ。
「僕がやって差し上げましょう」
素直に珊瑚を渡すと、「失礼しますね」と言ってAの髪の毛を触る。
髪の毛を優しく引っ張って耳にかけ、器用に珊瑚をさした。
「…お似合いですよ」
ジェイドの手が離れる。
それと同時に他の2人からの視線が集まった。
「うんうん、やっぱりすっげー似合ってる!」
「…いいんじゃないですか?」
フロイドは嬉しそうな顔をして、アズールは微笑んでいる。
その様子を見てAも満足したようだった。
そうして4人は "歌と踊りの国" を後にした。
248人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:inucoro | 作成日時:2020年5月27日 3時