愛の名のもとに (ページ43)

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「ねえ、横尾さんっ・・・」

本当にこの先まで行ってしまう、またそう思うと目をぎゅっと瞑り太輔の体を強く押した。

「迎えに来るんじゃ、ないの・・・？怒られちゃ、」

勢いよくソファの上に戻されると、太輔が私の両肩の隣に手を置いて、私のことを見下ろした。

「なんで渉のことそんな風に呼ぶの？」

そうだ、この顔。

本来の藤ヶ谷太輔は、こういう風に不機嫌そうに冷たい目で、私を見る。

「なんで、って・・・」

「俺と今こんなことしてるのに、なんでそんな顔して他の男の名前呼ぶわけ？」

どうやら私は、押してはいけないスイッチを押してしまったみたいだ。

「むかつく。」

真面目に怒っているみたいな顔をしながら、そう小さく言ったのを聞き逃さなくて思わず笑ってしまう。

「・・・だって、横尾さんだよ？怒られたらマズイでしょ」

笑いを堪えながら、ほら、行こう、って立ち上がり部屋を出ようと促す。

「むかつく」

ドアノブに手を掛けようとしたところで、肩を引いて体を太輔の方に向けられるとそのままドアに押し付けられた。

「痛っ・・・、いんだけど」

そう言い返したのも束の間、首元に乱暴にキスをされるから抵抗するけど、さっきよりも強い腕の力に抗うことが出来ない。

ピリピリと感じる首筋の痛みに、何をされたかなんて分かって子供じみた行為に苛立つ。

「・・・最低」

唇を離した太輔の顔を睨みながら言うと丁度携帯が鳴って、横尾さんからだと思った。

今度こそはすぐに部屋を出て、外に出ると思った通り横尾さんが車の中で携帯を耳に当てていたから勝手にドアを開けて乗り込む。

「送って下さい」
「太輔は？」

バックミラー越しに横尾さんを睨むと、乱れた髪とか服装で状況を理解したらしく「・・・俺、タクシーの運転手じゃないんですけど」と言いながらも面倒臭そうに車のエンジンをかけた。

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