愛の名のもとに (ページ39)

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「・・・は、い？」

携帯電話が鳴って、反射的に手に取り耳に当てる。

「あ、ごめん、寝てたよね」

「・・・ごめんなさいっ、今日シフト入って、ましたっけ！？」

一気にクリアになる思考に、閉じていた目を見開いて眠ったままの体を勢い良く起こした。

「ごめんなさい、今から行きますっ、」

ベッドの横にある時計に目をやると、午前二時を回っていた。

「あ、違う違う、違うの」
「・・・え？」

ベッドから降りて、電気を点けるとマネージャーが申し訳なさそうに言った。

「Aちゃんに・・・お客さんが」

すぐに行きます、気付いたらそう返事をしていて、家を出る支度をしようと勝手に体が動いていた。

多分冷静に考えれば、こんなことはしていない、と思う。

冷静に、考えられていれば。

冷静になれないことを、頭のどこかが冷静に理解している。

携帯電話と鍵を持って、適当に靴を履いて部屋を出た。

振り回されるだけなのに、と、もう一人の自分の声が頭に響く。

それでも冷静さを失った私は少し震える手を伸ばして、じわじわと沸き立つ感情に気付かないふりをしながら、タクシーを止めていた。

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