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誰も私を知らない場所に行ってみたいと思った。





「A」





一人で生きてみたいと思った。




「・・・・藤ヶ谷、太輔」




目を細めて、目の前にいる人物の名前を呟く。


「お昼のAも可愛いね。エプロンも似合ってる」


サングラスにハット、変装しているつもりなのかもしれないけど、逆に目立っていると思う。

幸い、なのか他のお客さん達は誰一人気にも留めていないようだった。


「・・・あの、何が目的なんですか」


仕事中なので手短にして欲しいんですけど、そう言いながら、床に視線を落とした。


「目的?目的なんてないよ。Aに会いたくなったから会いに来ただけ。・・・ん?あれ?それって目的なのかな?」


あはは、と呑気に笑っているから、この人は自分の立場とかこの状況とかその他諸々、ちゃんとわかっているんだろうか。

そもそもそんな事を理解出来ていれば、今までのような非常識な事はしていないか、そう勝手に結論付けて溜息を飲み込んだ。


「あの・・・何がしたいのか知りませんけど、ここには来ないでもらえませんか」

「うん、ごめんね。仕事中なのに」


なんでこの場所を知っているのかなんて、聞く気にすらなれない。


「・・・そういう問題じゃ、ないんですけど、」


なんかもう、色々面倒臭いことになりそうで、知らない方が良いようなことばっかりだろうなと思うともう何も聞く気にはなれなかった。


「・・・・あの、」


何て言えばこの人にマトモに伝わるんだろう、そう悩みながら目頭に指を当て俯き言葉を探す。


「悩むことないよ。俺だって戸惑ってるから」


掛けていたサングラスを外して、眉を下げながら笑う。

困ったような顔で、でもその目がすごく優しいから、卑怯だと思った。



「もうわかるでしょ、俺たち恋に落ちたの」



そんな使い古されたようなクサい台詞、今まで何度使ってきたんだろう、冷静な頭でそう考えながら、それとは裏腹に心臓が速く音を立ててそこから動けなかった。




「俺のこと、好きになっていいよ」




一人で生きようと、思っていた。





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ma(プロフ) - 続きが読みたいです!!よろしくお願いいたします。 (2023年3月7日 9時) (レス) id: cb1a0ddf39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:EM | 作成日時:2017年3月11日 1時

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