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午後5時。
人もまばらになった校舎に、やっと穏やかな時間が流れ出した。
受付のテントを片付ける小島は、小さく溜め息をついて私の方を振り返る。
小島「今年も終わったなぁ、文化祭」
疲れた、と緩く笑う小島の背後には溶けそうな夕陽が沈みかけている。
そういえば、こんな感じのオレンジ色の景色を去年も見たような気がする。
「疲れたなぁ、ほんまに」
小島「色々あったもんな、A」
色々あった、ほんまに。
長尾くんはまだ保健室におるんかな、保健室行ったら会えるんかな。
ほんまに大事ないとええんやけど。
そんなことを考えていると、少し高いところから小島が私の顔を覗き込んでくる。
不意に近付いた距離に、僅かに息が詰まった。
小島「長尾くんのところ、行きたいんやろ？」
「………行ってええの？」
小島「ええで、あとの片付けはやっとく」
オレンジ色の景色の中で、小島が優しく笑う。
「ごめん、ありがとう」と呟いて、私は踵を返した。
歩き出したら、だんだん早足になって
それから無意識に走り出す。
上履きをぱたぱたと鳴らして走る私を、校舎に残った生徒たちは少しだけ見遣ったけど、声はかけなかった。
廊下を走って、階段を駆け上がって
保健室へと向かう。
教室の前をいくつか過ぎて、長尾くんのいるところに向かう。
(大丈夫やった？)
(守ってくれてありがとう)
(でもなんで、逃げてくれんかったん？)
(私は長尾くんに、怪我してほしくなかった)
保健室の扉の前まで辿り着くと、私は小さく息をついた。
引き戸に手をかけた瞬間、ゆっくり
ゆっくりと向こう側から扉が開く。
扉が開いた先にいたのは、私より少しだけ背の高い、綺麗な顔をした
私の大好きな人。
長尾「…………A、先輩？」
続く (更新停止中)
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年9月24日 18時
