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それから数十分後、やっと列が落ち着いて
私も小島も、パイプ椅子に力なくへたりと座り込んだ。
小島「つ…かれたぁ〜」
「疲れたなぁ…」
小島「半分はお前が遅刻したせいやけどな」
「それは、ほんまにごめん」
私がそう呟くと、小島は少し困ったように笑ってから「別にええけど」と答えた。
小島「で？ 長尾くんとは会えたん？」
「うん。会えて、話せた」
小島「そっか、良かったやん」
「……うん、良かった」
いつもならピンボールみたいにとんとんと続く小島との会話が、変に滞る。
少しだけ小島の方を見遣ると、小島は居心地悪そうな表情で唇の端を噛んでいた。
小島「……や、なんやその…Aとこういう話、したことないやろ。なんか…なんて言えばええんやろな」
「……ふふっ、えぇ？ そんな感じになってる小島初めて見てんけど」
小島「だって、いや……なんて言うてええか分からんて、おめでとう、とか？」
「うん、それでええんちゃう？ 嬉しいで、小島がおめでとうって言うてくれたら」
そりゃ嬉しいに決まってる。
目を引くぐらい整った顔で、背が高くて
面白くて、でもちょっと変で。
あんなふうに歌う自慢の友達が、おめでとうって言うてくれたら、嬉しいに決まっとる。
そんな気持ちで小島の顔を覗き込むと、小島は首の後ろを掻きながら、形の綺麗な唇を薄く開いた。
小島「………じゃあ、おめでとう。なんか、複雑やけど」
「複雑なん？ なんで？」
小島「だって、お前に彼氏が出来たら色々気ぃ遣わなあかんやん。あの子、彼氏おるのに小島とばっかりおるって悪口言われんで？」
「言われんよ、小島は今更やし」
小島「今更ってなんやねん」
「今更は今更。急に話さんようになったらそっちの方が変やよ」
小島「そんなもんなん？」
「そんなもんやろ」
そう答えると、小島は不服そうやけどちょっとだけ嬉しそうに小さく頷いた。
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年9月24日 18時
