3-16 ページ34
_
「………………えっと、何それ」
小島「そのまんまの意味やけど」
「……健ちゃんが、私の…えっ、どういうこと？」
小島「一緒におって楽なんやろ？ ならちょうどいいやん、俺もAとおるん楽しいし」
少女漫画みたいなセリフを放った健ちゃんは、「どう？」とやっぱり綺麗な顔で訊ねてくる。
ちょうどいいって、そんな適当なことで本当にいいの？ と、たぶん本当は断らないといけないって分かってるのに、甘えた自分勝手な私が顔を出す。
健ちゃんが言うなら、
相手が健ちゃんなら、
別にいいんじゃないかって。
「…………健ちゃんがいいなら、よろしくお願いします…？」
吃りながらそう返すと、健ちゃんはパァッと目を見開いてから、テーブルの端に置いていた私の右手を取って硬く握った。
握手、みたいな
そんな感じ。
「…なんで握手してんの？」
小島「そういうもんなの！感動的な再会を果たした二人がなんやかんやあって結ばれたら握手する決まりやねん」
いつも通り適当なことを言う健ちゃんだけど、不意に放たれた “結ばれた” という言葉に、思わず怯む。
そんな私の内心に気付いたのか、健ちゃんは私の右手を両手で握ったまま、困ったように微笑んだ。
小島「でも、別になんも変わらんやろ？ 俺らの関係。連絡できるときに連絡して、会えるときに会って、今と変わらんよ」
「そう、かな？」
小島「今の距離が好きやもん、俺」
健ちゃんはそう言って、パッと手を離した。
それが少し寂しくて、寂しいと感じてしまう自分の浅ましさに気付かされる。
タイミングが良かったから、
ちょうど良かったから、
そんなことで本当にいいのかな。
“——Aさんのそういうところが格好良いし、好きやなって思う”
こんな時に、彼の
長尾くんの言葉を思い出す。
今の私、格好良くないよ。
格好良くいられなくて、ごめん。
やっぱり、私は長尾くんの前だと、きっと無理してた。
「………私、私ね」
そう言いかけたとき、テーブルの端に置いた携帯が震えた。
断続的に、何度も。
「ごめん、電話出ても——」
小島「出んな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 246人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野 | 作成日時：2022年7月31日 22時
