短編集花 (ページ13)

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ベンチに腰掛けると、"ちょっと待ってて"と歩いていく髙木さん。
戻ってくる手元には２本のペットボトル。

戻ってくると、自然な仕草でそのうちの１本を手渡してくれて思わず受け取る。

「紅茶飲める？」

「あ、はい」

一人分くらい距離を開けてドカッと座って、自分も同じものを飲む髙木さん。

髙木さんがおもむろに口を開く。

「…伊野尾さん。

本当はめちゃくちゃ怖かったでしょ？
だって、

……ずっと手、震えてる。」

言われて気づいた。
ほんとだ、震えてる。。

「…あ、ホントですね〜〜！(笑)
もう夜だし、ちょっと肌寒くなってきたから震えてるだけでいつもこうなんですよ私！！！
あははは〜〜」

なんてヘラヘラ笑ってたら、

ぎゅっ。

…え。抱きしめられてる…？

思考が止まる。

「ほぼ初対面だし、こんな目に合わせた原因作ったの俺だし何言ってんだって思うかもしれないけど……

泣いていいんだよ伊野尾さん。

“大したことない”って平静装って、俺にも気を遣ってくれるけどさ。

大したことあるよ。伊野尾さん、身も心も傷付いたんだよ。怖かったんだよ。」

髙木さんの語りかけるような、優しい声と言葉に。
気付いたら頬を熱いものが伝っていた。

ポロポロ溢れていって止まらない。

嗚咽したかと思うと、気づいたら子供みたいに大声で泣いてた。

「うあぁ〜〜〜、こ、こわかったあ〜〜〜〜、うぅ〜、」

優しくトントンと背中を叩いてくれる髙木さん。

どれくらい髙木さんの腕の中にいただろう。
しばらくすると少し落ち着いてきた。

「…髙木さんが助けてくれてから、ちょっと忘れてたんです。ビンタされてた最中のこと。

…多分、恐怖がすごかったんで頭が忘れようとしてたんですね。その後現実味がなかったのも、自分を守ろうとする本能だったのかな…。

正直すごく怖かったです。集団で、どんなひどいされるか分からないし。ビンタは痛いし。

罵倒されたのも…あまり覚えていない部分も多いですけど…怖かったし…惨めでした…自分でもちょっとそうなのかななんて思ったり……グサっときました…」