・ ページ9
.
「おいし?」
「ん、おいち!」
「よかった〜」
はふはふと小さな口に、取り分けてあげた魚とご飯を詰め込んで喜ぶけいにまた癒される。
まだ幼いのに和食が好きな弟を見ながら、自分が小さな頃はお子様ランチしか食べなかったな、と思い出す。
「あ、けいご飯ついてるよ」
もちみたいなほっぺについてるご飯粒を取ってあげる。
「じゃ、そろそろ行こっか」
「どこ?」
「海だよ、けい」
「うみぃ?!」
海、好きだもんなぁ。
でもごめんね、きっと、絶対いい思い出にはならないよ。
冷たくなった潮風が容赦なく吹き付けてくる。
真っ暗な空に真っ暗な海、闇を吸い込んだみたいなそこはおぞましくて、風が強い分、波の音も凄まじい。
「ひかにぃ、こわい」
目の前の景色を見てしゃくりあげながらそう言うけい。
「にぃにと一緒だから怖くないでしょ」
「やぁやっ!こわいぃ〜!」
「怖くない!」
より一層大きくなる胸元の泣き声に恐怖と苛立ちと罪悪感が募る。
それでも無視して崖の方まで足を進めていると、いつの間にか泣き疲れて寝てしまったらしいけい。
その方が怖くなくていいかもしれない。
ごめんねだめなお兄ちゃんで。
.
402人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すいのん(プロフ) - ゆ 。さん» とてもとても嬉しいお言葉ありがとうございます!励みになります(;_;) (2023年4月5日 0時) (レス) @page29 id: 2a4d715210 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ 。(プロフ) - 数少ないjgin小説ありがとうございます。主様の書き方がすごく好きで何回も見させていただいています!! (2023年3月30日 18時) (レス) id: 132d25980b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すいのん | 作成日時:2020年12月31日 0時