トリーブ ページ1
"遠く響く音拾い上げ 辿る道は夢現"
"此の手掴む彼の手は既に無く 有るは霞む眼差し"
ゆったりとした歌い上げから、その曲は、アップテンポなものへと一転する。
それに合わせて踊るかのようにひらりと飛翔した女性は、ヴァール感染者が操る人型重機をたった一撃で地に沈めた。
「衣装」の隙間から覗く彼女の脚は、銀色に光る特殊な金属で覆われている。
それが人型重機の関節部を正確に狙い撃ち、次々と無力化していくのだ。
女性だけではない。
ワルキューレとは違う聞き慣れない曲をバックに突如として現れた彼らは各々武装し、それぞれのパートごとに分かれて歌い、そして戦っている。
ある者は腕を、ある者は剣を、ある者は銃を用い、しかしそれぞれがリズムを乱すことなく完璧に調和を保っている。
まるで、ワルキューレのように…いや、それ以上に素早く、彼らはヴァールを「制圧」した。
彼女たちよりも圧倒的な、歌声と、武力で。
"―――面影追いし 儚き夢に 別れを告げて いざ進み参らん―――"
曲が終わる。
たった一曲。
ほんの数分のうちに、戦場と成り果てていた街が、静寂を取り戻した。
信じがたい出来事を前に茫然とする市民、その上空に、簡易ステージが展開される。
一斉にライトで照らされたそこに立つのは、四人の男女だった。
その見慣れない衣装を纏った彼らのうちの一人が、声高に名乗る。
『俺達は"トリーブ"！本能のまま叫ぶ者！金は取らねぇ、俺達の歌を聞けェ！！』
補足しておこう、この男は「銀河の妖精、シェリル・ノーム」のファンだ。
だがそんなことはお構いなしに、彼らの曲は流れ始めた。
呆気に取られていた市民が、その圧倒的な声量とパフォーマンスにのみ込まれていく。
まるでメンバーが互いを叩きのめし合うような迫力に、自然と観客は聞き入った。
先ほどまでの悲鳴は歓声に替わり、悲嘆にくれる者は立ち上がり、街中に鳴り響く歌声と爆音が悲劇を掻き消していく。
その様は、「異常」と言う他なかった。
たかが声、たかが歌、たかが音楽。
形を持たないはずのそれらが、失意に沈む者たちを鼓舞し、叩き起す。
ワルキューレのように励ますのではない。
トリーブは悲哀を消し飛ばし、人々に力を分け与える。
『泣いて叫んですっきりしたらァ！立って前向いて笑って進めぇ！！』
異様な熱気に包まれ、もはや彼らの「ライブ会場」となった街は、朝を迎えた。
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糸圭卯格(プロフ) - 「進まない」一部変更いたしました。 (2017年5月5日 12時) (
レス) id: 00eb5803e0 (このIDを非表示/違反報告)
糸圭卯格(プロフ) - 綺羅さん» 初めまして綺羅さん！このところ忙しくて中々更新ができない状況にあります(-_-;) 落ち着いたら順次更新する予定ですので お待ちいただければ幸いです 。 お待たせしてしまい申し訳ございません_(._.)_ (2017年5月4日 16時) (レス) id: 00eb5803e0 (このIDを非表示/違反報告)
綺羅(プロフ) - 更新楽しみにしてます！！頑張って下さい！ (2017年5月2日 19時) (レス) id: 36ff8fed08 (このIDを非表示/違反報告)
糸圭卯格(プロフ) - 「輸送機」修正します(；一_一)申し訳ありません… (2017年2月3日 20時) (レス) id: 11761a9c1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：糸圭卯格 | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/bbs/inkscope
作成日時：2017年1月23日 23時
