手を伸ばしても、君には届かない。(kz×短編集)

4-1 (夏の暑い日) ページ9

「あっつ…」
額に汗が滲んできて、長くなってきた前髪をかきあげる。

「なんでこんな日に外に出なくちゃいけねーんだよ。」
そんなことを言っても暑さは変わるはずも無く、相変わらず太陽の日差しはアスファルトの地面をじりじりと照りつけた。

あぁ、エアコンの良く効いた部屋の中に戻りたい。
なんて思っても足は止まってくれず、歩みを進めた。

俺の世話をしてくれている島崎さんが今日は休み。
しかも今日は祝日で学校も無い。

朝飯は適当にパンなどで済ましたが、昼飯はそうとはいかない。
前に島崎さんから教わった冷やし中華でも作るか。
今日は暑いし、作るのもそこまで難しくない。
よし、そうしよう。



俺はそう決めて、スーパーへ行く足を速めた。


今日は特に暑い日らしい。
シャツも汗でぐっしょりと濡れてしまっている。
帽子を持ってこなかったことに後悔した。

このままだと熱中症になってもおかしくない。
近くに自動販売機があるのを見つけた。
バッグから財布を取り出し小銭を入れスポーツドリンクのボタンを押した。

んー、うまい！
猛暑の中で飲む冷たいスポーツドリンクはとても美味しい。

まだ喉が渇くので、もう一度ペットボトルを飲みながら近くの公園を横目で見る。
遊具で遊ぶ子供たち。
小学校低学年くらいだろうか。
男女混ざって遊具の上や下ではしゃぎまわっている。

よくもまぁ、こんな暑さの中で遊べるもんだ。
俺なら、木陰じゃないとやってられん。

そう思って公園の中にあるベンチを見た。
ベンチの後ろはたくさんの木があり、日陰になっていて涼しそうだ。

そこのベンチにはもうすでに人が2人座っていた。
うん、普通はそうだよな。



と、自分で納得しかけた時やっとその2人が誰なのか気づいた。
「…は？」
衝撃的な光景に動揺を隠せない。
まさか、と良くない想像が頭の中を駆け巡る。


「………なんで、アーヤと砂原が2人でいんだよ。」

頭がくらっとする。
それは猛暑のせいなのか目の前の出来事のせいなのかは分からない。

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