昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ20)

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となり*20 ページ20

そして、ふと思った。

………どうして、私は今日まで気づかなかったのだろう。

あれだけ気になっていたのに、彼の名前も覚えていなかったしましてや歌い手のとなりの坂田。と同一人物だなんて思いもしなかった。
そう考えて、後悔。

「まぁ、俺としては時間があれば会いたいけどね!」

1人で悶々と考えていたら、ふと耳に入ってきた言葉。
え、会いたいって言った?私に?

カァッと熱が集まる頬。

彼は、どこも汚れのない純粋な笑顔で続けた。

「リスナーさんの本音を聞ける機会ってあんま無いから、元同級生なら聞きやすいんやけど……」

ストンッと私の中に入ってきた。
あぁ、なるほどね。

私と会いたいんじゃなくてあくまでもリスナー目線からの意見を聞きたいから会いたいっていうことか。
そう考えれば納得する理由。

＿＿＿＿けれど、どこかそれが悲しくなった自分もいて。

胸がズキンッと痛んだ。

けれど、そんな気持ちを奥に追いやって私は微笑む。

「私でよければ、いつでもいいよ。
元同級生としてサポートしたいので。」

彼がパァッと効果音が付くんじゃないかというほどの喜びを見せる。

「今、敬語外れた…!!」

あ、まだそこ気にしていたのね……。
そんなに喜ぶのなら、頑張って外していこうかななんて。

彼を呼ぼうと思って、ふと考えた。

「……あの、なんて呼べばいい?」

彼は頭の上に分かりやすくハテナマークを浮かべる。

「名前のこと!」

そうすると、あぁと納得した顔をした。

「普通に、中学のままでええよ。」

中学の時……確か、坂田君って呼んでいたはず。
待て、私はさかたんに坂田君と呼ぶのか?

けれど、彼がそれを望んでいるのなら…

「じゃあ、坂田君?」

そう呼ぶと、満足気に頷いた彼。
その姿が、あの頃の記憶の中の彼と重なって心臓が一際大きく音を立てた。