昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ16)

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となり*16 ページ16

思わず、自分でも笑ってしまうほどの単純思考だと思う。

彼女の言うあいつとは、100パーセント中学最後の隣の席の彼のことだろう。
確か、当時彼女にだけ彼への気持ちを言っていた。
今でも彼女がそのことを覚えていたことに少々驚きを隠せないけれど。

勢いで送ってしまったが、もう遅い。
日にちが合わなければ、会社に言って有給休暇をもらおう。
東京へは最も安い便で行こう。
向こうには、確か親戚がいたはずだ。
頼んで、そこに泊めてもらおう。

歌い手さんのライブの時にも思いつかなかった解決策が次々と浮かんでくる。

＿＿＿きっと、これは。

私が、まだ彼の事を忘れられないでいるから。
それ以外考えられない。

けれど、やはり中学の頃の気持ちを大人になった今でも引きずるのはダメだ。
そんなこと、自分がよく分かっている。

私は、タンスの前に立ち引き出しを開ける。
そして、ある物を取り出す。

「……けじめ、つけないとな。」

私は、手に持った薄い赤のハンカチを見つめる。
きっと、このハンカチが彼を忘れられないでいる大きな原因。

だから、同窓会で彼にこのハンカチを返して、過去の思いごと消してしまおう。
そう決意して、同窓会の日を待った。

…………はずだったのに。

……

同窓会当日。
私は、腕時計を見つめて何度目か分からないため息を吐いた。

「まだ、暗い顔しとるん?
久々に皆と会えるんやから、もっと明るい顔!!」

横には、同窓会の連絡をもらった友人…なぎさ。
集合時間である4時の15分前。3時45分を私の腕時計は示している。

「何で、忘れちゃったんだろう!!!」

数十分前の私に戻りたい。
けじめをつけるとかカッコいいことを決意していたのに、ハンカチを旅行バッグの中に忘れてくるなんて………

数メートル先に同窓会の会場。
ここから、お世話になっている親戚の家まで急いでも30分。

そして、また私はため息を吐くのであった。