昔、隣の席だった君。【skt】 (ページ12)

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となり*12 ページ12

「あまり時間取れないので、握手が終わったらすぐにずれてくださいね。」

スタッフさんの声に、頷きながら最後尾で私は待っていた。
一番最初に並んでいる子が、さかたんと握手しながら満面の笑みを浮かべている。

それもそうだ。
今までイヤホン越しで聞いていた大好きな人の声が、自分だけに向かって発せられているのだから。

次々と握手をしていく人を見ながら、私もあの立場に立つのか…とドキドキしてきた。
なんて考えていると、私の番になったようでスタッフの人に促される。

机越しにいるさかたん。
……この距離で確信に変わった。イケメンだ。
ライブ後だからだろうか。
少し赤くなっている頬も、私を見る瞳も、全部全部可愛いと思ってしまう。

……………ん?

待てよ、私、見つめ合ってる?

「…え、と、あの………。」

さかたんとものすごく目が合っているこの状況。
逸らそうにもなんだか気まずいし、握手もまだ出来ていない。

見つめてくる瞳は、私じゃないどこかを見ているようで余計目を逸らせなくなっている。

見つめ合っている。
冷静にそう考えると、あとから顔が火照ってくる。
……どうして、こんなに見られているのだろうか。

と、思ってハッとする。
髪型が崩れてるとか？あと、メイクが崩れて大変なことになっているとか?

さっき、鏡を見ようとしてやめたことに後悔する。
なぜ、私はちゃんと確認しなかったのだろうか。
これで、どこかおかしいことになっているのなら……

想像をして、変な汗が噴出してくる。
ああ!大好きな人が目の前にいるというのに何やっていたんだ私!

「坂田さん、時間が。」

スタッフさんから言われて、ハッとした様子に変わったさかたん。
私から目線を外して、手を出してきた。
私も急いで手を出して、意外にもしっかりとした大きな手を握った。