出会い ページ1
「……ない…」
かばんの中を勢いよくかき回し、私は冷や汗を浮かべる。
改札のちょっと手前で立ち止まり、ぶつぶつと独り言を漏らしながら。周りの人たちは、私が立ち止まっている位置が邪魔なのと、独り言を言っているのが気味悪いのか、だいぶひどい視線を向けてきている。
「あ、あの…」
たしかに玄関の棚の上に置いておいて、それをつかんでカバンに入れたはずだ。今日が学校じゃなくて本当に助かった。
先ほど友人には『なくしものしちゃったかもしれない、遅れる…ごめんね』といった内容のメッセージを送信済みだ。それでも、遅れてしまう事への罪悪感が胸をきゅうきゅうとしめてくるので、ただただ焦ってカバンを漁る事しかできなかった。
「あの…聞こえてますか…?」
それにしても、どうしてこんなに探しているのに見つからないのだろう…
「あの!すみません!!」
「はい!!?」
急に耳元で大きな声が聞こえ、私の体はピクリとはねた。恐らく耐えかねた誰かが私を怒鳴ったのだろう。そりゃそうか。改札の真ん前だし。
「す、すみません、こんなところで立ち止まっちゃって、邪魔ですよね……すみません…すぐどきます…!」
「あ、いえ、そうではなくて……」
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作者名:Fの小説 | 作成日時:2022年7月15日 16時