それでも貴方は ページ25
リリア「愛しているぞ」
A「………?」
Aが言うよりも早く。リリアが口を開いた。唐突に告げられた言葉の意味を理解するのに…Aは情けない声を出してしまう。
リリア「ほれ、こっちへ。そんなところで座り込むでない」
そう言ってリリアはポンポンと自分の隣をたたいて座る事を促す。Aはよろよろとふらつきながらリリアの隣へ向かう。
無理もない。ようやく気がついた自分の気持ちを、恋焦がれる人に告げようと燃えていた炎は、突然『好きだ』ではなく、『愛している』と言われた事によって消されてしまったのだから。
リリア「くふふ…先を越されるのが嫌でのぅ…つい言ってしまった」
A「あの、なんでわかったのでしょうか…」
リリア「雰囲気じゃよ」
そう言われてしまうと、心当たりがあるので顔を赤らめ、うつむいてしまう。こんな時間に部屋に忍び込むのだ。しかも永い付き合いだ。リリアは一瞬でAの異変に気がついたのだろう。
リリア「…わしの方が、先にお前さんを好きになっていたのじゃからな」
そんな目で見ないでほしい。暖かく、優しいまなざしでAの事を見つめるリリア。今のAはきっと恥ずかしさと彼のかっこよさで蒸発してしまうだろう。
A「私、いつも気がつくのが…遅いですよね……」
顔を再び下に向けて、Aは呟く。その声音はどこか自嘲めいていた。
300人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Fの小説 | 作成日時:2021年4月9日 21時