▽▲ 寝ても覚めても 2 ▲▽hkin,inhk (ページ8)

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でも、こうして落ち着いた対応ができるようになったのは最近のこと。

いのちゃんが初めてウサギちゃんシンドロームを発症したとき、俺はそんなこととは知らずにいのちゃんの言葉を鵜呑みにした。

『来ないで』『ひとりにして』

しばらく1人にしてあげようなんて思って家を出て、帰ってきたら家の中はめちゃくちゃ。
強盗にでも入られたかと思って慌てていのちゃんを探したら、綺麗な手を血だらけにして床に座り込んでるのを発見して…

結局それは、自暴自棄になって物に当たり散らした時にできた傷で、決して自分でつけたものではなかった。

だけど、今後、シンドロームの発生が命に関わることもないとは限らない。

ウサギちゃんシンドロームを克服するために必要なのは、本物の愛情。

特に、患者がいちばん望む相手からの愛であれば、症状を軽くするにはなおさら良いらしい。

だから俺は決めたんだ。いのちゃんがシンドロームを克服できるように、隣でたくさん愛を注ぐって。

「いのちゃん、ほら、もっとこっちきて？」

「いやだっ…どっかいってよぉっ…」

「ぎゅーしよ？ね、寒いでしょ？」

「さむくないっ…離れてっ…」

「じゃあ、寂しいからぎゅーしよ？」

「いらないっ…さみしくないっ…」

「俺は寂しかったよ？最近、ちょっと忙しすぎたね。…いのちゃんも、寂しかったら言っていいんだよ？」

「っ…さみしく、ないもん……ひかるがいなくても、大丈夫だもん…」

「俺は、いのちゃんがいないとだめだよ。だからそんなこと言わないでよ…ね？」

「うそ、だあっ…。だって…だってひかるはっ…」

ふるふる肩を震わせて、きゅっと口を結ぶ。

「ひかるには、やぶがいるもん…大ちゃんも、ちねんも…ゆうとも、やまだも、たかきも…けーとだって！！」

いつも潤んでる瞳がさらに潤んで揺れて、ぽたぽた大粒の涙が溢れた。

ブランケットを握りしめる手が、力みすぎて白くなっていく。

「…おれには、ひかるしかいないのぉっ…」

ちいさな声で絞り出したあと、子供みたいにしゃくりあげる。

いつものらりくらりしてるいのちゃんからは想像出来ないほど感情的で。

「っふ、うぇぇ……ひかる…どこにもいかないでぇっ…」

「…行くわけないじゃん、バカだなぁ、もう」

さっきよりも強く抱きしめた。