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ウサギちゃんシンドローム hkin ページ7

ちょびっと病系要素あり。










*





朝。

起きたら、隣に寝てるはずのいのちゃんが居なかった。

俺より早く起きることなんて仕事で朝が早い時くらいなのに。


そっと寝室のドアを開けて、静まり返った廊下に出た。
リビングのドアを開ければ、この寒いのに暖房もついてない部屋の中、ソファにひとつのかたまりができている。



「…いのちゃん?」

「……」

「いのちゃん、」

「っ、こ…ない、でっ…」

「…また出ちゃったの?」

「っ…ひかるこないでっ、お願いっ…」



ブランケットにくるまってソファに丸くなるいのちゃん。

寂しがりのいのちゃんが『来ないで』なんて言う時は、決まってあの症状が出ている時だ。



「…大丈夫だから、ね?ひかが一緒にいるから」

「やっ…いらないっ……ひとりにしてぇっ…」

「俺が居たいから居るんだよ、それじゃあだめ?」

「やだ…いらない、ってば……!」



そうは言うけどほっとけない。
言葉の割に、隣に座ってブランケット越しに頭を撫でてもいのちゃんは拒まないから。



日々の不安、孤独、愛情不足。
寂しくて仕方ない状態に陥った時、反対の言動・行動をとって終いには自我を失ったように暴走してしまう。

最近そういった症状の人が急増して、世間はそれを『ウサギちゃんシンドローム』と呼ぶようになった。



ウサギちゃんシンドロームを発症する人は、決まって極度の寂しがり屋。

といっても、甘えることが上手な人はこの病気を発症しない。発症しやすいのは、寂しいのに甘えられない人。


責任感が強くて周りを頼れないとか、寂しがりなのに誰かに甘えるのが苦手だとかね。

甘えたい本能に逆らい続けたり、甘えることはいけないと思い込んで無理や我慢をして頑張りすぎる傾向が強い、特に長子が発症することが多いと言われている。


いのちゃんもその例に漏れなかった。


本当の自分を見せたくなくてテキトーを演じてるいのちゃんは、本当の気持ちまで隠してしまう。


悩みを相談しないし、ひとりで何でも抱え込む。

責任感が強くて、真面目で、寂しがりやのくせに限界まで強がって…


そして、こうして時々シンドロームの波にのまれる。



「いのちゃん、大丈夫だから、ね?」

「ぅっ…うぅ…」



めそめそ泣いてるいのちゃんをブランケットごと抱きしめて、ゆっくり背中を撫でる。

冷たい体温が俺に移るように、いのちゃんの苦しみも俺にうつってくれればいいのに。

・→←▽



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作者名:みつあめ | 作成日時:2020年11月29日 0時

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