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「……」
私の推測に黙ったままの宿儺さん。その顔を見ることができない。
未だ無言を通しているが、彼はどんな顔をしているだろうか。
でもこの先の想像はできる。盛大なため息をついて「くだらない」と言うのだろう。そうでしょうとも、貴方からすればそうでしょうよ。もう一層の事ことそう言って欲しいと思っていると、突然引き寄せられ、宿儺さんは私の首筋に顔を埋める。
「大馬鹿者が…」
想定外の言葉に耳を疑った。でもこれは聞き違いじゃない。
彼が今、どんな顔をしているのかわからない。
その言葉にどういう感情が込められているのか読めないが、その声はとてもか細いものだった。
予想を遥かに越えた行動に狼狽えていると、程なく首元でガリっと歪な音がした。
『ひぁッ!ちょっと宿儺さん何するんですか?!』
噛まれたところに手を添えれば、ぬるっとした嫌な感触。
手のひらを見れば赤い血がべっとり付いていた。
しかも本人は何か口をモゴモゴさせている。
『な、何したんですか?』
「食った」
『はぁ!?食った!?』
「味見だ、それくらい許せ」
『許すも何も無いですよ!!何しでかしてんだ貴方は!お腹壊しますよ!?』
「ケヒヒっ」
『笑い事じゃないですよ?!』
嗚呼そうだった、この男はこう言う奴だった。まったく人の話も聞かない・通じないこの感じは何度も記憶で見た。
「……紅葉は、確かに俺の前でつまらん死に方をした」
突然語り出した宿儺さんはまた遠くを見つめ、私を抱く手の力は強める。
「俺が殺すと言ったというのに……いや、俺が殺したようなものか…間違ってはないか」
独り言のように呟き、分かりづらいが顔色が曇っていく。
その独白の言葉に、ただただ見ることしか出来なかった。
紅葉さんの記憶にある彼とは全く違いすぎて、本人なのか疑う程に……
「オマエが居らぬ世界は至極退屈だった…」
嗚呼、この人は……
「だが、次は殺さん。この俺を愉しませる女はオマエしかおらん。故に手元に置く。俺以外の者と話すな、触れるな、俺の名以外呼ぶな。今度こそ、オマエは俺の物だ」
やっとこちらに目を向けた宿儺さんは私を四つ目に映し、恍惚とした顔で頬に触れる。
嗚呼、やっぱりこの人は呪いだ。紅葉さんと愛し方が同じだ。
まぁ少なくとも紅葉さんは私を人形として見てはいないけど…悠仁君に見せる愛情表現の本質は似ている。
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ユエ(プロフ) - シルクハットさん» シルクハット様、ありがとうございます!ゆっくりですが今後の展開をお楽しみください。 (2022年1月11日 12時) (レス) id: 25e139d61d (このIDを非表示/違反報告)
シルクハット - この作品大好きです!応援しております。 (2022年1月1日 10時) (レス) @page7 id: c50cd9efca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユエ | 作者ホームページ:http://id34.fm-p.jp/419/masatika8377/
作成日時:2021年12月3日 0時