倉子ちゃんと猫のつんちゃんと村上さん2 ページ12
倉子side
髪も洗ったし、
歯も磨いたし、
顔も洗ったし、
鏡をみながら、一つずつ点検する。
ツインテールにしたし、
今日はお化粧も薄めだし、
清純派、ばっちりだわ。
今日は、例のbarで紹介されたバイトの面接日。
彼に紹介されたんだから、恥ずかしくないようにちゃんとしなきゃ。
彼に恥をかかせられないわ。
まぁ、実らない恋なんだけど、彼の喜ぶ顔は見たい。
何であの男なのかしら。
図体ばっかりでかい男。(笑)
私のほうが、こんなに可愛いのに。
いいわ、今からでも遅くないわ。
私の方も振り向いてもらえるように、
頑張らなきゃ。
それには、もっと良い女になって絶対振り向かせてみせる。
よし、女、磨くぞ！
ちょっと気張って買った花柄ワンピースに
無地のカーデガンを羽織り部屋を出た。
「場所はスマホに入れたし、
さぁ、新しい自分に向かって出発！」
「にゃぁ〜。」
アパートの角を曲がると、子猫の声が聞こえてきた。
「にゃあー。」
声はだんだん大きくなった。
「何処かしら？
私、忙しいんだけど。」
「にゃあー。」
「ごめんね、私、今から忙しいんだ。
帰ってきたら、何か持ってくるから。」
そう言って、その場を後にした。
帰ってくるまで、居るといいな。
その猫が、後々、私の運命を変えていくことになるとは、その時にはわからずにいた。
アルバイト先のお店には、歩いて15分くらいの場所だった。
ちまたの若者に人気の、目黒川沿いの桜の木の下にあった。
パッと見、あまり大きい店ではなさそうだけど、外にはカフェテラスもある。
木造のちょっと懐かしい香りも残している。
私、ここで働くんだ。
自分に喝をいれて、いざ店の中に入った。
「いらっしゃいませ。」
店に入ると、店主らしい人が声をかけた。
なんか、へらへらしてそうな感じのひとだった。
「あの、安田さんから紹介されました、」
「あぁ、章ちゃんの。」
「はい、アルバイト希望で。」
「そっかぁ、章ちゃんのお友達？」
「いぇ、知り合いなだけで。」
「章ちゃんらしいな。」
「え？」
「彼はね、誰ともお友達になっちゃうからね。(笑)
で、いつから働ける？」
「は、働かせてもらえるんですか？」
「お願いできるかな。」
「は、はい。
でも、そんな簡単で、大丈夫ですか？」
「章ちゃんのお友達っていうだけで、大丈夫だよ。」
あのでかい人と言い、この人といい、まったく大丈夫なのかしら。
「明日からよろしくね。
俺は店主の丸山です。
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作者名：niko | 作成日時：2019年12月27日 22時
