短編集 1 (ページ11)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:51,671 hit

快適な台風の過ごし方 5 niko ページ11

緑side

何とかカレーも作り終え、後はご主人様が
帰ってくるのを待つのみ。

テーブルの上に置いてあったスマホを見ても

やすからの連絡はない。

もうすぐ帰ってくるよね。

外はあいかわらず、ピカピカ、ゴロゴロ。

こういう時の高層マンションは、かえって迷惑になる。

いつもなら絶景の夜景も、今は左右に揺れていて、見る所ではない。

こういう時って、みんなどうしてるんやろ。

一度メンバーの亮ちゃんに聞いたことがあった。

「そんなん、平気やん。
俺はかまわずでかけるで。
おーくらはでかけられへんの？(笑)」

聞いた俺が間違っていた、と後悔したのは
後の祭りだった。

それにしても、遅い。
電話してやろうと思っても、もし運転中だったらと思うし、雨が酷いから、事故でもしたら、とか、いろいろ頭を過ぎる。

悪いことを考えはじめると、ますます余分なことを考えてしまう。

あの時もそうだったな。

子供のころにあった大震災。

あかりも消え、ただ暗闇か広がる中で

何もすることなく、ただふるえていた日々。

お母さんは弟たちの面倒に忙しい。

僕のそばにも、いて欲しかった。

でも、お兄ちゃんなんだからという言葉に、

ひたすら我慢しなきゃいけなかった。

あ～、また思い出しちゃったな。

ゴロゴロ、ドォーン。

「あかん、ほんまにあかんって。(泣)」

俺はとりあえず、浴室に逃げ込んでしまった。

その時は、やすが帰ってきた時のことまで
考えられずにいた。

やすがあんなにパニックになるなんて。