倉とやすの物語�� ページ17
やすside
「かゆい所とか、ございませんか？」
俺の頭をガシガシ洗いながらおーくらはこう
声をかけた。
「うわぁ、おーくらって美容師さんみたい
やん。」
「やす専属の美容師でございます。(笑)
んで、かゆい所は？」
「え？背中かゆいなぁ。」
「髪の毛ちゃうんかい。(爆笑)」
「へ、へ、冗談だよ。」
「そんなん言うんやったら、絶対背中も洗っ
たる！」
「前も洗ってくれる？」
なんて言ったものだから、
「ドアホ！」
と言って水をかけられた。
「ほら、のぼせてしまうまえに、先に出な
さい。」
「ふぁーい。」
浴室を出てお気に入りの白のもこもこの
パジャマに着替えた。
これは前に誕生日プレゼントにおーくらに
もらったものだ。
喜んでくれるかなぁ。
それより覚えてくれてるかなぁ。
またちょっとドキ ドキしてきちゃった。
あ、そうだ、
ベッドどうしたらええんやろか。
一緒に寝たらダメかな。
お風呂から出てきたら聞いてみよっと。
「おまえまだ髪の毛乾かしてないの？」
いつのまにかおーくらがお風呂から出て、
後ろに立っていた。
腰にタオルを巻いただけだった。
「ほら、ここに座って。
で、ドライヤーはどこ？」
「あ、あそこにあるよ。
洗面所の壁にかけてある。」
「どれどれ。」
といいながら探しに行ったおーくらの背中を
見つめた。
「あった、あった。
で、コンセントはどこ？」
「ここにあるで。」
「あ、わかった。
じゃあソファーに座って。」
そう言うと今度は俺の髪を乾かし始めた。
「なんか映画のワンシーンみたいだね。」
「おまえ、見てくれてたん？」
「ちゃんと見たで。」
「恥ずかしいけど、ありがとう。」
「うふ。
どういたしまして。(笑)」
「ほら、ちゃんと首まっすぐにして。」
「はぁ〜い。」
気がついたら自分の心がこんなにも穏やかに
なっていた。
俺がずっと望んでいたのは、こんな時間だっ
たのかもしれない。
「ほらお姫様、出来ましたよ。」
「ありがとう。
じゃ俺もおーくらの髪の毛、乾かす。」
「そうか？
じゃあお願いしようかな。」
「うん。(喜)」
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作者名：niko | 作成日時：2021年3月15日 19時
