家族の元シードたち (ページ2)

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『もしもし、お兄ちゃん着いたよ。どこにいるの？』

照「麗奈お疲れ様。今〇番ゲートにいるよ。」

私は兄が日本で暫くサッカーの監督をする事になり、両親から日本で勉強したらどうかと言われた。
韓国は日本よりも超学歴社会。
大学に入る為に全てを捨てる勢いで勉強をする。
日本のほうがまだ余裕を持って生活を送れるのではないか。そう考えての事だった。
兄も、大学まで日本で過ごし、卒業と同時に韓国のチームに入った。私もその方がいいだろうと考え、
もう一つの母国へ行くことを決めた。

『お兄ちゃん～！会いたかった～！』

照「麗奈、僕も会いたかったよ。元気そうで良かった。」

兄の車に乗り、家に向かう。と言っても、兄と一緒に住むのでは無い。兄は山梨にある木戸川清修の監督をしており、私の通うことになる雷門とは遠いからだ。
雷門は私立にしては珍しく、中学部しかない為、高校がじっくりと選べるのではないかと考え、兄とは違う学校を選んだ。

照「麗奈の住む家なんだけれど、他にも何人か中学生が住んでいるんだ。元シードの子達なんだけれど。」

『ええと、シードはフィフスセクターの人達だっけ？』

照「元だけどね。フィフスセクターはもう解散して、その中の身寄りの無い子や家庭の事情で親と住めない子達が一緒に生活しているんだ。僕の友人に、麗奈が日本に来る事を言ったら、そこで住まないかって。家も広いし麗奈も1人でいるよりはいいだろう？女の子だしね。」

『確かに、正直1人は怖いなって思ってたし、流石お兄ちゃんの人脈…。というか写真で家を見たけれど豪邸だった…結構楽しみ。』

照「麗奈が気に入ってくれて良かったよ。」

羽田空港からおよそ1時間。着いたのは八王子だ。
東京23区ではなく、西の方だったのは正直驚いたが、家を目の前にすると凄いなと思う。

門の前には引越し業者のトラックが既に着いていて、荷物の運び出しが行われていた。

照「さあ、着いたよ。丁度引越し業者も来てるみたいだし。本当は折角の再開だからもっと居たかったんだけど、学校の部活が始まってしまうから…ごめんね。落ち着いたら連絡して欲しいな。…사랑해요(サランヘヨ)。」

『ううん、お兄ちゃんも忙しい中ありがとう。必ず連絡するから！사랑해요(サランヘヨ)！』

お兄ちゃんに抱きしめられ、束の間の兄妹の時間が幸せだ。

今は午後2時。他の子達は学校に行っており、誰もいない。皆が帰って来るまでに終わらせなければ。