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だから、僕はこの物語に理解も共感もできなかった。わからないのだ、彼らのしていた葛藤が。好きな人が他の人と仲良くしているから嫉妬するとか、好きな人にもっと見て欲しいだとか、そもそも好きな人と付き合いたいという感覚さえも僕にはなかった。僕にとって、付き合うとか結婚だとかは恋愛の終点ではない。それと同時に、恋愛においてハグ、キスなんかを重要だと思ってはいない。それらに対して嫌悪感があるわけではないが、肯定しようとも思えない。
僕は、君さえ幸せならばそれでよかった。それが僕の恋だった。君が僕と付き合うことを望むならば喜んで受け入れるけれど、例え君が僕のことなんか見ていなくても、嫌っていても、忘れてしまわれたって構わなかった。だからこそ、好きな人に愛されたいと望むこの物語に理解ができなかった。
そして、僕にとって君は世界の全てであった。皆がこの物語に感動したり共感しているのに対し、僕の中には付き合うことが幸福な結末だというその価値観が、好きな人と触れあいたいという感性そのものが存在しない。しかし、尊く愛しい君が愛した物語というだけでそれが恋愛の「正解」であり、崇拝し目指すべき美しいものなのだと錯覚してしまう。君はいつも僕にとっての正解で模範解答なのだ。君の好きなものは僕も好きで、それが僕にとっても正しい。君が嫌いなものは僕も嫌いで、それは僕にとって間違い。こうして僕の世界は君の感覚を共有しながら出来上がっていく。
割れ物を飾るようにそっと本をサイドテーブルへと戻し、明かりを消す。部屋の中はすでに夜の世界だというのに、僕の頭はまだ冴えたままで、いつまでも彼女のことを考えている。恋の模範解答が相手を求めることならば、僕が心臓の奥底に抱えているこの感情はなんだろうか。恋と呼ぶにはあまりにも自己完結していて、愛と呼ぶにはあまりにも一方的である。世の中には「付き合うこと」をハッピーエンドとし、それを求め、触れあいにときめきを感じる物語が溢れかえっている。それが恋愛の正解ならば、これは一体なんだろう。ただひとつ言えることは、僕は君が好きだということだけ。他の誰よりも何よりも好きで、大切で。君を思うこの気持ちは僕だけのもので、それに名前なんてきっと必要ない。
「Aちゃん、好きだよ」
そうぽつりと呟き、永遠にも思えるような長い夜の中で目を閉じた。
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＊IJu＊(プロフ) - これからもこっそり更新楽しみにさせて頂きます……！ (2021年11月4日 21時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - いつもこっそり更新を楽しみにしている者ですが、まさかの自分の最推しのお話が更新された事に興奮してしまい…コメント失礼しますorz偽薬さんの小説はどの子のお話も最高に最高で(語彙力)文章も素敵で大好きです…！！ (2021年11月4日 21時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» こちらこそありがとうございます。黄昏さんのイラストですので、もちろん外部サイトに投稿していただいて問題ありません！ URL記載も任意で構いませんよ(^^) (2021年2月19日 17時) (レス) id: 21f878ceea (このIDを非表示/違反報告)
黄昏(プロフ) - 偽薬さん» ありがとうございます…！嬉しいです！描いたイラストなのですが占ツク以外にもTwitter等に投稿してもよろしいでしょうか？(URL記載致します。) (2021年2月19日 15時) (レス) id: 0afb2c72bc (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» はじめまして、偽薬です。お褒めいただき恐縮です！ ファンアートの件、もちろん大歓迎です！ 楽しみにしてますね！ (2021年2月19日 3時) (レス) id: 2a0f159948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：偽薬 | 作成日時：2018年10月18日 0時
