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「真名部くん」
不意に、優しい声で名前を呼ばれた。重い頭を動かして、声のした方に視線を向ける。
そこに立っていたのは紛れもない、Aさんだった。
お気に入りの部屋着を身に着け、心配そうな表情を浮かべてこちらを見ている。裸眼なのでぼやけているが、僕がその声、その姿を間違うはずもない。Aさんだ。
頭がぐるぐるとかき混ぜられているようだった。何かがおかしいことはわかった。けれどうまく脳が働かない。
何も答えられない僕を見て、彼女はさらに眉を下げて言った。
「真名部くん、どうして泣いてるの」
……どうして。それは、だって、君が。
割れるような痛みの中で考える。今まで、何か悪いことが起こっていた。怖い思いをしていた。けれど、なぜか思い出せない。まるで夢だったみたいに、先ほどまでたしかにあったはずの記憶を思い出すことができない。ただ漠然とした不安が胸に残されているだけ。また頭が痛い。
僕は……どうして僕は泣いているんでしょう。
フローリングに転がったまま悶えていると、彼女がしゃがみこんで僕の頭をそっと撫でた。途端に頭痛はすっと引き、体も頭もふわふわとした気分になる。上半身を起き上がらせ、彼女と視線を交わす。穏やかな微笑を浮かべて僕を見つめている。
「怖い夢見ちゃったのかな。もう大丈夫だよ」
「Aさん……！」
僕は叫んで、勢いよく彼女に縋り付いた。彼女は「わっ」と少し驚いたような声を上げてから、またいつもの優しい声で「どうしたの」と言葉を落とす。そうだ、僕はきっと怖い夢を見ていたんだ。もう、どんな夢だったかは思い出せないけれど。その不安から逃れるために、彼女の首元に頭を預ける。シャンプーの甘い香りの中に、かすかに血の匂いがする。
「ふふ、今日は珍しく甘えたさんだね」
よしよし、と優しく背中を叩かれる。まるで子供を寝かしつけるみたいに、ゆっくり、規則的なリズムで。それが心地よくて、僕はさらに頭をすり寄せた。目を細め、無言で彼女をねだる。このまま眠ってしまいたい、と霧がかった脳内で思考する。
Aさん。大好きです。愛しています。もう君を離さない。二度と。たとえ死んでも。
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＊IJu＊(プロフ) - これからもこっそり更新楽しみにさせて頂きます……！ (2021年11月4日 21時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - いつもこっそり更新を楽しみにしている者ですが、まさかの自分の最推しのお話が更新された事に興奮してしまい…コメント失礼しますorz偽薬さんの小説はどの子のお話も最高に最高で(語彙力)文章も素敵で大好きです…！！ (2021年11月4日 21時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» こちらこそありがとうございます。黄昏さんのイラストですので、もちろん外部サイトに投稿していただいて問題ありません！ URL記載も任意で構いませんよ(^^) (2021年2月19日 17時) (レス) id: 21f878ceea (このIDを非表示/違反報告)
黄昏(プロフ) - 偽薬さん» ありがとうございます…！嬉しいです！描いたイラストなのですが占ツク以外にもTwitter等に投稿してもよろしいでしょうか？(URL記載致します。) (2021年2月19日 15時) (レス) id: 0afb2c72bc (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» はじめまして、偽薬です。お褒めいただき恐縮です！ ファンアートの件、もちろん大歓迎です！ 楽しみにしてますね！ (2021年2月19日 3時) (レス) id: 2a0f159948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：偽薬 | 作成日時：2018年10月18日 0時
