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玉の緒よ、絶えなば絶えね、ながらへば、忍ぶることの弱りもぞする。式子内親王の詠んだ、忍ぶ恋の歌だ。意外と可愛い歌が好きなんだな、やっぱり源田って好きなやついるんだろうなと勝手に思った。
「じゃあ尚更、伝えない恋ってどう思う」
俺の質問に「どう思うって……」と呟いてから少し考えるような仕草をする。彼の答えを待ちながら、さっき自販機で買ったコーヒー牛乳にストローを刺した。昨日はいちご牛乳だったので、今日はコーヒー牛乳なのだ。
「まあ、一般的にはそう言うよな。本人に好きだと伝えられないまま終われば、何も始まらないわけだし、切ないんじゃないか」
ごく正論。そしてごく一般論。源田はまた、弁当に箸を伸ばし始めた。その弁当箱は俺の食事とは違って一面野菜だらけだ。
彼の答えが一般論すぎることも、ハンバーグが好きだったはずの源田が野菜ばかり食べてることも、俺はなんだか気に食わなかった。その不満を晴らすようにてり焼きバーガーにかぶりつく。やっぱりこれが一番おいしい。体に毒だよとか、不健康とか言われても知らない。好きなものを好きなように食べたいだけだ。
「ところで源田、最近なんで野菜ばっかり食べてるんだ？」
話題を変えるため、弁当を指差しながら尋ねる。不思議なことに、ここ一週間くらい源田の弁当には野菜ばかりだった。一緒に食事をしても野菜しか食べなくなった源田に、成神が「なんか絶対おかしいって！」と騒いでいたのは記憶に新しい。
「ベジタリアン目指してて」
「ベジタリアン？」
「結構いいぞ、デトックス効果がある」
「デトックスなあ。俺はどうせなら、毒でもいいから好きなもの食べて死にたいけどな」
おいしいなら体に悪くてもいいんじゃないかとさえ思う。ポテトをつまみながら言葉を付け足す。それを聞いた源田は「それもそうかもな。わかるよ、それ」と笑った。じゃあなんで野菜ばっか食ってんの、別に好きじゃなかっただろ、とは聞けなかった。
幼馴染という関係性が崩れてしまうことが怖いからとか、すでに恋人がいるからとか。そういうのは結局、消極的な判断による消去法に他ならない。積極的理由故に伝えないことを選んでいる物語が、この世にどれほど存在しているだろうかと考えた時に、そもそも恋というものが「特別になりたい」とか「手を繋ぎたい」とか、そういう感情が伴ってる可能性が高いから難しいんだろうなって納得した。
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＊IJu＊(プロフ) - これからもこっそり更新楽しみにさせて頂きます……！ (2021年11月4日 21時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - いつもこっそり更新を楽しみにしている者ですが、まさかの自分の最推しのお話が更新された事に興奮してしまい…コメント失礼しますorz偽薬さんの小説はどの子のお話も最高に最高で(語彙力)文章も素敵で大好きです…！！ (2021年11月4日 21時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» こちらこそありがとうございます。黄昏さんのイラストですので、もちろん外部サイトに投稿していただいて問題ありません！ URL記載も任意で構いませんよ(^^) (2021年2月19日 17時) (レス) id: 21f878ceea (このIDを非表示/違反報告)
黄昏(プロフ) - 偽薬さん» ありがとうございます…！嬉しいです！描いたイラストなのですが占ツク以外にもTwitter等に投稿してもよろしいでしょうか？(URL記載致します。) (2021年2月19日 15時) (レス) id: 0afb2c72bc (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» はじめまして、偽薬です。お褒めいただき恐縮です！ ファンアートの件、もちろん大歓迎です！ 楽しみにしてますね！ (2021年2月19日 3時) (レス) id: 2a0f159948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：偽薬 | 作成日時：2018年10月18日 0時
