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それに、縛り付けようとしたらきっと俺は徹底的にやるだろう。全員の連絡先を削除させ、親とも絶縁させ、二度と家から出られないようにするかもしれない。しかし、それは学生という身分でできることではない。中途半端に閉じ込めれば、Aに一層寂しい思いをさせてしまうに違いない。そうやって彼女を傷つけたいわけではなかった。だから追いかけることもできなかった。なんて、こんなのは弱い男の言い訳だろうかと自嘲する。
彼女から連絡が来ることは一切なくなった。そうして、他の男のところに行ったきり戻ってこなくなった。それでもいつかは戻ってくる。だから俺から会いに行くことはしないし、連絡をとろうともしなかった。その「いつか」がくる時までは、気が向いた時だけ来てくれればいいのだと、彼女が戻ってくることを信じていた。
そうして何ヶ月、何年が経ったのだろう。あれから彼女からの連絡は一度たりともなかった。それでも彼女の一番は俺だと信じていたので、スマホのロック画面は変わらず、何年か前のAの写真だ。
「ねえねえ、おにいちゃん」
リビングでスマホを眺めていた俺の元に、妹の夕香が駆け寄ってきた。なんだろうと思ってそちらを見ると、何かを後ろに隠すようにしながらニコニコと立っていた。
「どうした、夕香」
「あのね、友達が標本をくれたの！ お父さんと一緒に作ったんだって」
「標本？」
ほら！ と俺に見えるように掲げたそれは、美しい蝶々の標本だった。そこに飾られていた一匹の黒い蝶に、思わず息がつまりそうになった。カラスアゲハ。なぜか俺はこの蝶に、あの小悪魔のように笑う彼女を重ねた。
何も言わない俺を心配したらしい夕香が「おにいちゃん？」と俺を呼ぶ。はっとして、不安気に俺を覗き込んでいる夕香に笑顔を見せた。
「そうか。標本は作るのが大変だと聞く。大切にするんだぞ」
そう言って頭を撫でると、夕香は標本を抱えて嬉しそうに部屋に戻っていった。
あんな風に、Aの笑顔をずっと手の届くところに置いておきたい。そのためにも、俺ははやく大人にならなくてはいけない。
再びスマホの画面に目を落とす。彼女のＳＮＳには、相変わらず他の男と遊んだ時の写真が載せられている。これも気まぐれな彼女の浮気癖だ。いつかお前を独り占めできるようになったら、その時は俺からお前を迎えに行こう。もう寂しい思いなんてさせないからって。
彼女の投稿に反応を残すことなく、スマホを切ってソファに投げた。
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＊IJu＊(プロフ) - これからもこっそり更新楽しみにさせて頂きます……！ (2021年11月4日 21時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - いつもこっそり更新を楽しみにしている者ですが、まさかの自分の最推しのお話が更新された事に興奮してしまい…コメント失礼しますorz偽薬さんの小説はどの子のお話も最高に最高で(語彙力)文章も素敵で大好きです…！！ (2021年11月4日 21時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» こちらこそありがとうございます。黄昏さんのイラストですので、もちろん外部サイトに投稿していただいて問題ありません！ URL記載も任意で構いませんよ(^^) (2021年2月19日 17時) (レス) id: 21f878ceea (このIDを非表示/違反報告)
黄昏(プロフ) - 偽薬さん» ありがとうございます…！嬉しいです！描いたイラストなのですが占ツク以外にもTwitter等に投稿してもよろしいでしょうか？(URL記載致します。) (2021年2月19日 15時) (レス) id: 0afb2c72bc (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» はじめまして、偽薬です。お褒めいただき恐縮です！ ファンアートの件、もちろん大歓迎です！ 楽しみにしてますね！ (2021年2月19日 3時) (レス) id: 2a0f159948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：偽薬 | 作成日時：2018年10月18日 0時
