＊＊ ページ25
数ヶ月ぶりに連絡が来た。俺の家で話がしたいという連絡に、家に誰もいない日を返信すれば、いつもよりはやく返事が来て、その予定は案外すんなりと決まった。そうしていつものように膝枕を無言でねだった。
今日は、蝶をモチーフにしたきれいなイヤリングをしている。誰かに貰ったのだろうか。耳元を撫でるとゆらゆらと金色の飾りが揺れ、金具が控えめな音をたてながら光を反射した。
「気になる？ このイヤリング」
「ああ、お前に似合っているなと思って」
俺が素直な意見を口にしても、彼女は神妙な顔で、ベッドのそばにある時計をじっと見つめたままだ。もしかしたら、違うものを見ているのかもしれないが。
「最近仲良くなった男の子がくれたの。似合うよって」
「俺もそう思う。センスがいいなと伝えておいてくれ」
これを贈った男はセンスがあると思う。俺はアクセサリーとかそういった類のものに疎いから、彼女に似合うものを贈れる男には心から尊敬したし、感謝したい気持ちさえあった。
しかしその答えはAにとって気に障る言葉だったようで、俺の言葉を聞いた彼女は「もういい」と吐き捨てて俺の手を払った。
「どうして嫉妬しないの？ どうして行くなって言ってくれないの？」
今まで目を合わせてくれなかったAが、じろりと俺を睨んだ。
軽蔑するような、見限ったような視線に俺の体が冷えていく。反面、脳は熱いマドラーでかき混ぜられたようにぐちゃぐちゃになっていた。黙っていれば彼女を否定することになる。どうにか話をしたくて、弁解のわずかな余地に縋る。
「それはお前が」
大切だから、と言おうとしたが、それは彼女の言葉によって叶わなかった。
「あーわかった。もういいよ。そうですね、私が悪かったです」
「待て！ 違う、俺の話を聞いてくれ」
うるさい。もう会いたくない。俺の静止を聞かず、そう言い捨ててAは部屋を出ていった。ぱたんと扉が閉まる音の後、部屋には静けさと、彼女の甘い香りだけが残された。伸ばしかけた手は行き場を失い、そのまま宙をさまよった後、そっと下ろされた。後悔とも、罪悪感とも違う感情が俺の心を塗りつぶす。
彼女は俺に嫉妬して、他の男の元に行くのを止めてほしかったのだと、今更気がついた。俺は、彼女が他の男を望むのならば止める権利はないと思っていたし、何よりも彼女のことを信じていたからそれをしなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
＊IJu＊(プロフ) - これからもこっそり更新楽しみにさせて頂きます……！ (2021年11月4日 21時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - いつもこっそり更新を楽しみにしている者ですが、まさかの自分の最推しのお話が更新された事に興奮してしまい…コメント失礼しますorz偽薬さんの小説はどの子のお話も最高に最高で(語彙力)文章も素敵で大好きです…！！ (2021年11月4日 21時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» こちらこそありがとうございます。黄昏さんのイラストですので、もちろん外部サイトに投稿していただいて問題ありません！ URL記載も任意で構いませんよ(^^) (2021年2月19日 17時) (レス) id: 21f878ceea (このIDを非表示/違反報告)
黄昏(プロフ) - 偽薬さん» ありがとうございます…！嬉しいです！描いたイラストなのですが占ツク以外にもTwitter等に投稿してもよろしいでしょうか？(URL記載致します。) (2021年2月19日 15時) (レス) id: 0afb2c72bc (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» はじめまして、偽薬です。お褒めいただき恐縮です！ ファンアートの件、もちろん大歓迎です！ 楽しみにしてますね！ (2021年2月19日 3時) (レス) id: 2a0f159948 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：偽薬 | 作成日時：2018年10月18日 0時
