優しい毒に溺れてろ【松野】 ページ2
彼女は昔から不器用だった。
スポーツはもはや壊滅的だし、お菓子作りや料理に挑戦してみても失敗ばかり。何度か、河川敷でシロツメクサの花かんむりを作って遊んだことがあるけれど、彼女がちゃんと作れていたことなど一度だってなかった。
また、ボクが彼女を不器用だと述べたのは、手先の話だけではない。人間関係の築き方や、世の渡り方などを含んだ表現であるが、つまるところ彼女はひどく要領が悪かった。幼馴染であるボクはそれをよく知っていた。
「こんにちは〜！ って、あれ？ 空介くんだけ？」
静かだった部室に少し高めの声が響く。顔を見なくても誰なのかはすぐにわかる。ボクのことを「空介くん」と呼ぶのはこの部で一人しかいない。
「A、今日は来るの早いね。円堂はもうとっくに練習行ってるよ。他のやつらは委員会だってさ」
「空介くんはどうしたの？ 休憩中？」
「ボクは留守番。部室、留守にするわけにはいかないだろ」
一瞥もくれぬままそう返せば、聞こえてきたのは「そっか〜」という随分間抜けな声だ。
ぱたんと読んでいたマンガを閉じ、ようやく彼女に目を向けると、いつもの見慣れた制服姿ではなく、最近着るようになった部活用ジャージ。髪は乱れている。昔から何も変わらない。
「っていうか、髪の毛ぼっさぼさ」
「あ、走って来たからかな」
「やっぱり。座んなよ、結んだげる」
そう言って近くにあった椅子をぽんぽんと軽く叩けば、彼女は嬉しそうに笑い、大人しくそこに座った。他の奴らには見せたことのない表情だろう。彼女は極度の人見知りだから。
乱雑に結ばれていた髪をほどき、手櫛で整えていく。やわらかくてふわふわとした髪。指を通す度にシャンプーの優しい香りがする。
昔からずっとそうだった。何も変わってなどいないのだ。
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＊IJu＊(プロフ) - これからもこっそり更新楽しみにさせて頂きます……！ (2021年11月4日 21時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - いつもこっそり更新を楽しみにしている者ですが、まさかの自分の最推しのお話が更新された事に興奮してしまい…コメント失礼しますorz偽薬さんの小説はどの子のお話も最高に最高で(語彙力)文章も素敵で大好きです…！！ (2021年11月4日 21時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» こちらこそありがとうございます。黄昏さんのイラストですので、もちろん外部サイトに投稿していただいて問題ありません！ URL記載も任意で構いませんよ(^^) (2021年2月19日 17時) (レス) id: 21f878ceea (このIDを非表示/違反報告)
黄昏(プロフ) - 偽薬さん» ありがとうございます…！嬉しいです！描いたイラストなのですが占ツク以外にもTwitter等に投稿してもよろしいでしょうか？(URL記載致します。) (2021年2月19日 15時) (レス) id: 0afb2c72bc (このIDを非表示/違反報告)
偽薬(プロフ) - 黄昏さん» はじめまして、偽薬です。お褒めいただき恐縮です！ ファンアートの件、もちろん大歓迎です！ 楽しみにしてますね！ (2021年2月19日 3時) (レス) id: 2a0f159948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：偽薬 | 作成日時：2018年10月18日 0時
