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『でも、挨拶はしてこようかな』
「挨拶?」
『うん、挨拶』
「白石君……?」
木野の声を聞きながら、白石はグラウンドに踏み入れて帝国を見つめる。
突然グラウンドに足を踏み入れてきた雷門選手の存在に気付いた彼らがそちらに視線を向けた瞬間＿＿＿帝国のベンチでどよめきが起こった。
「鬼道さん、何故あの人が……!?」
「……どう言うことだ。
海外に行ってたんじゃないのか」
『＿＿よく知っていらっしゃる。
そうだよ、海外に行ってた。』
帝国の会話が耳に届いた白石は、キャプテンマークを着けている＿＿天才ゲームメーカー、鬼道有人に目を向けた。何かを察した鬼道が帝国ベンチから離れて白石の前に出ると、そこは誰も口出しができない強者同士の世界になってしまった。
帝国も、秋も、2人の様子をを見ることしかできない。
『技術向上と社会見学を兼ねてね。他にも理由はあったけど、君たちに襲える義理はないかな』
「は、十分な力を得ているというのに、まだ何か望むのか?」
『それは君達だって同じじゃない?
何十年も前からずっと負け知らずの帝国でも、日々の練習は欠かせないだろ。』
「俺達は強くなくてはならない。だからこそ練習をしている。だがお前は違うだろう。お前は……弱者になっても失うものは無い」
『……へぇ、なるほど』
「＿…っ!?」
次の瞬間、白石は鬼道の目の前から風のごとく姿を消した。
鬼道が慌てて後ろを振り向いても彼の姿はない。
再び視線を前に戻せば、先ほどよりも近い距離で白石の髪が揺れていた。
その距離に、
鬼道は小さく息を飲む。
『君は俺が何も失わないって、
そう言ったよね』
「……あぁ」
『と言うことは、君は負けてしまうと何かを失うのかな？』
＿＿＿＿蜂蜜色の瞳を持った美しい少年に、無意識のうちに漏らしてしまっていた失言を突き詰められることがこんなにも圧を感じてしまうなんて。こんなこと、生まれて初めてだった。
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作者名：-naki-
x他1人 | 作成日時：2018年5月28日 20時
