第83話 ページ9
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綴の脚本も完成し、何回か読み合わせを始めた頃。
今日は第二幕からの読み合わせをしようと各々が準備をしている中、突然開いたレッスン室の扉。
雄三「よう、調子はどうだ」
...相変わらず急にくるのはなんなの。
そう思いつつ、慣れてきている自分がいることに思わず苦笑いを浮かべる。
隣にいた左京からはちっという舌打ちが。
それに気が付いたのか、雄三はニヤニヤとした顔を浮かべながら、こっちまで近づいてきた。
雄三「おお、松川から聞いてたが、ほんとに居やがる。久しぶりだな、左京の坊主」
"坊主"。
その単語が耳に入った瞬間、誰のことを言っているのか分からなくて。
思考が止まった私を余所に、左京は眉間の皺をさらに深くさせた。
左京「なんでこれを呼んだ」
いづみ「え!?私が呼んだ訳じゃ――」
雄三「いいじゃねえか。春夏面倒見てきたんだ。ついでに秋組も見てやるよ」
左京「ちっ」
..."あの"左京が、言い返せなくなってる。
そんな珍しい姿に、思わずニヤリと口角が上がっていく。
寮では左京が年上だし、こんな風に子供扱いされることなんて滅多にない。
まあ私だって多少いじったりはするけど、結局は倍になってやり返されちゃうし。
やばい。レアだ。
...そう心の中ではしゃいでいたんだけど。
雄三「おうA。そういや、千秋楽ん時びーびー泣いてた以来会ってなかったか?」
左京「...あ?泣いてた?」
『は?泣いてないし見間違いじゃないかな』
よりにも雄三はとんでもない爆弾をぶちこんできて。
それ以上余計なことを喋らせないようにきっと睨みつけても、この人には効いていない。
むしろどこか楽しそうにケラケラ笑っている姿が余計に腹立たしい。
というか、千秋楽で私が泣いたことをなんで知ってるんだ...!
雄三「ははっ、お前も可愛い顔するようになったじゃねーか!」
『あーもう、うるさいなぁ!てかそれやめてっていつも言ってんじゃん!!』
いづみ「相変わらず雄三さんはAちゃんと仲良しですね!」
『いづみちゃん、よく見て!?』
私の頭を乱暴に撫でてくる雄三に、全力で拒否する私。
それをいづみちゃんがクスクスと微笑ましそうに笑っていて。
いや本当によく見て、これ。
私髪ぼさぼさになってるんだけど。
ちょっと他人事すぎるいづみちゃんに助けを求める視線を送っても、いづみちゃんは楽しそうに笑顔を向けてくるだけだった。
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琥珀(プロフ) - えななんさん» 更新ができずお待たせしてしまってすみません...。こうして今でもコメントいただけると、とっても嬉しいです!寒くなってきましたので、お身体にはお気を付けくださいね。 (2022年10月6日 11時) (レス) id: 3c7d372253 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - だいぶお話も進んで、冬組に近づいてきていて嬉しいです!これからも楽しみにしてます! (2022年10月3日 17時) (レス) @page41 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - るるるーさん» ありがとうございます!これからも喜んでいただけるように更新を続けていこうと思っているので楽しみにお待ちいただけると幸いです! (2022年8月8日 0時) (レス) id: 74473316dd (このIDを非表示/違反報告)
るるるー(プロフ) - この前作品を読み始めたばかりなのですが、あっという間に読んでしまいました!!ワードセンスや設定などとても好みです!無理しない程度に、更新頑張ってください。応援しています! (2022年7月29日 18時) (レス) id: 4d458783a4 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 瑠李さん» 本当ですか!?お読みいただきありがとうございます!更新頻度にばらつきがありますが、是非楽しみにしていただけると嬉しいです^^ (2022年7月14日 10時) (レス) id: 8c7c498829 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀 | 作成日時:2022年4月11日 23時