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第116話 ページ42

〜万里side〜




「んだよ、急に」



突然謝ってきたかと思えば、膝に顔を埋めて縮こまったA。




初めて見るこいつの落ち込んでる姿に、どうすればいいのか分かんねー。

こういう"負"の感情を、隠さず見せてくるヤツじゃなかったのに。





確かに、こいつは変わったと思う。


んなの、この寮に来てずっと気付いてた。




じゃあ俺は。

俺とこいつの関係は、何か変わったのかよ。




「っ、」




だからこそ、こいつまで伸びた手は動きを止め。

触れることなくそのまま元の位置へと帰ってくる。



そんな俺の葛藤を知る訳もないAは、小さく声を出した。




『...もう万里を利用するの、やめる』



「は?」




んだよ、それ。

どういうことだよ。




突然の言葉に、思考が止まり。

戻した手のひらにはぐっと力が籠る。




「...意味、わかんねぇ」




こいつに拒絶されたヤツらみてーにならないように、感情を抑える。

けど震えた声はどうにもならなくて。

一向にこっちを向かないAに、ほっと安堵する――けど。





『...そのまんまの意味だよ』




俺の焦りなんか気づきもしねぇで言葉を続けたAに、そんな我慢は限界を迎えた。





「っ、ふざけん――」




"ふざけんな"。

怒り任せに強く肩を掴み、無理やりにでもこっちを向かせようとした俺。

案外抵抗することなくすんなりとこっちを向いたAは。




「っっ」




―――泣きそうに顔を歪めていて。




『...だってっ、万里はずっと、私のために動いてくれてたんじゃん』


『だからもう利用しない』





"私はもっと、万里のこと大事にしたいの"。




そんな言葉がAから紡がれた時、夢なんじゃねえかと思って。

あれだけ触れることに抵抗してたのに、身体は正直にAを引き寄せた。

速くなっていく心臓が絶対にこいつにばれないように、と祈りながら。




「...別に、お前の隣が楽なだけ」




情けなく首元に顔を埋める俺に、Aの手が髪を撫でる。

震えてないことにほっとしながら、ゆっくりと顔を上げれば。





『私は万里の隣、けっこー好き』




そんな爆弾を落とされて。




「お、おまっ、はぁ!?」

『んふ、その顔レアだねぇ』




無邪気に笑うこいつに、一気に身体の奥から熱が湧き上がる。




多分、俺の弱みは一生こいつだけ。

それも悪くねぇな、なんて思う自分がいるのはこいつにはぜってー内緒だけど。






.

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琥珀(プロフ) - えななんさん» 更新ができずお待たせしてしまってすみません...。こうして今でもコメントいただけると、とっても嬉しいです!寒くなってきましたので、お身体にはお気を付けくださいね。 (2022年10月6日 11時) (レス) id: 3c7d372253 (このIDを非表示/違反報告)
えななん(プロフ) - だいぶお話も進んで、冬組に近づいてきていて嬉しいです!これからも楽しみにしてます! (2022年10月3日 17時) (レス) @page41 id: 15071f4cc5 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - るるるーさん» ありがとうございます!これからも喜んでいただけるように更新を続けていこうと思っているので楽しみにお待ちいただけると幸いです! (2022年8月8日 0時) (レス) id: 74473316dd (このIDを非表示/違反報告)
るるるー(プロフ) - この前作品を読み始めたばかりなのですが、あっという間に読んでしまいました!!ワードセンスや設定などとても好みです!無理しない程度に、更新頑張ってください。応援しています! (2022年7月29日 18時) (レス) id: 4d458783a4 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 瑠李さん» 本当ですか!?お読みいただきありがとうございます!更新頻度にばらつきがありますが、是非楽しみにしていただけると嬉しいです^^ (2022年7月14日 10時) (レス) id: 8c7c498829 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琥珀 | 作成日時:2022年4月11日 23時

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