第１１４話 ページ17
〜綴side〜
『咲也』
Aのその一言で、この場にいる誰もが息を呑んだと思う。
正確に言えば、Aが咲也の名前を呼んだ時の"表情"に、だけど。
―――Aは咲也にだけ心を開いてる。
それは俺の勘違いだったと、この時初めて思い知らされる。
『私と咲也は"友達"じゃん』
咲也「っ、」
『...違うの？』
友達。
その言葉だけを取れば、咲也を慰めているように聞こえるかもしれない。
でもにっこりと笑いながらそう言ったAを目の前にして、きっとそう受け取る人はいない。
それは、Aが咲也に向けた明確な"拒絶"だった。
そこにはいつも咲也に向ける優しい顔も、俺が知ってる楽しそうな顔もない。
瞳を濁らせ、口角を上げて首を傾げたAはまるで人形のよう。
咲也もそんなAの表情を向けられるのは初めてだったんだろう。
驚いたような、傷ついたような顔を浮かべれば、そのまま顔を下に降ろした。
咲也「...友達、だよ。ごめん、そんなつもりはなくて...」
『ん、分かればいーの』
そう言ってよしよしと咲也の頭を撫でるAは、もういつもの表情だ。
『ごめん、きつくあたりすぎたね』
咲也「っ、ううん。Aちゃんは悪くないよ、オレが...」
『はい、これでこの話はおしまい』
声が震えている咲也の頬をAは両手で挟んで無理やり顔を上げさせる。
そして咲也のおでこに自分のおでこをこつんと合わせれば、咲也だけに見せる笑顔をその顔に宿す。
『朝には帰ってくるからさ。学校一緒に行こう？』
咲也「一緒に行ってもいいの...？」
『もちろん。"友達"でいてくれるんでしょ？』
咲也「...うん」
咲也もきっとAのことが好きだ。
だから友達で居続けるなんて、本当は辛いはずなのに。
でもAの側に居るには、今はまだこの方法しか俺たちは選べない。
『んじゃ、行ってくる』
至「いってらー」
綴「...何かあったらすぐ連絡しろよ？」
『んもー綴は心配性なんだから』
ふふっ、と小さく笑みを溢したAは、そんな俺たちの想いに気付くこと無く背中を向けた。
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琥珀(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます！まだまだ春組ですが、気長に待っていただけると嬉しいです！ (2021年5月4日 23時) (
レス) id: 2e5c416c18 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 100話目おめでとうございます！いつも更新を楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2021年5月4日 20時) (レス) id: bf03d702ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀
| 作成日時：2021年5月4日 14時
