パンドラの匣

４７　脱出の刻 ページ48

外套から出ればなぜか軍服で、部屋の隅で寝転がっていた箱庭

声が聞こえる

ゴーゴリ「貴方が羨ましい 鳥籠で生まれた鳥は己が囚人だと気付かない

己が不自由だとすら知らず檻の中で幸福に死ぬ」

「何を・・・云っている？」

ゴーゴリ「見えないだろう？檻はここ 「頭蓋骨」だよ

僕たちは出られない・・・この温かく湿った地獄から」

自分の外套に包まりながらいろいろなことを思い出す

初めて会った時、初めて不法侵入された時、初めてチェスをした時

初めて本音を聞けたとき

いい友人だったと思う

いい友人だった

ドストエフスキーの処の人間だからと最初は警戒していたが

淹れてくれたコーヒーによってそれはあっさりと解かれた

敵同士だと言うのに笑いあって、子供の用に勝負をして

本当に楽しかった

コツコツと靴音がすぐそばで響く

ゴーゴリ「匣ちゃん もうすぐなんだ もうすぐ」

何を意味しているかは簡単に分かる

むくりと起き上がり、顔を見る 互いの目が合う

ゴーゴリ「匣ちゃん 君といた時間は楽しかったよ 敵同士だと言うのにね

気を付けた方がいいよ？コーヒー一杯で警戒心を解くなんて」

箱庭「おいしかったのが悪い」

ゴーゴリ「じゃあ私の性か」

箱庭「・・・」

ゴーゴリ「匣ちゃん 君は僕にとっていい友人だったよ」

箱庭「私もゴーゴリはいい友人だったと思う」

ゴーゴリ「好きだよ 大好き」

箱庭「私も好きだよ だーい好き」

ゴーゴリ「嬉しいなぁ 匣ちゃんから好きって言ってもらったよーなんて言ったら

ドス君は怒るだろうけど」

ゴーゴリ(好きって暴力的な言葉だと思ってた

「こういう貴方が好き」って「こう」じゃなくなったらもう嫌いなんでしょ？って

好きは束縛する言葉

それでも僕は君にこの言葉を贈るよ・・・)

ゴーゴリ「好きだよ 匣ちゃん」

箱庭「私も」

ゴーゴリ(どうか君は変わらないで

優しく、賢く、強かで

とっても強いけど本当は弱い君

美しく、愛らしい君

作り笑顔が得意だよね でもあの時の笑顔は本物だと思っていいよね？

あぁもうすぐで・・・)

ゴーゴリ「お別れだ」

箱庭「・・・本物だよ」

ゴーゴリ「！」

箱庭「ゴーゴリといた時は本物ばっかりだよ」

可愛らしく微笑む箱庭

ゴーゴリ「(あぁ本当に・・・)ありがとう」

箱庭「どういたしまして」

ゴーゴリ「もうすぐだからまた包まっていて すべて終わるまで出てきちゃだめだよ」

箱庭「うん わかった」

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