29日目 ページ29
「う゛っ」
私は動揺して着地まで気が回らず、
地面に背中を打ち付ける。
私の打ったシュートは
自分が打ったとは思えない威力でゴールに向かった。
円堂監督はぽかんとしていて、
迫りくるボールを見て慌てて右手を上に掲げる。
「ゴッドハンド――――」
その瞬間、円堂監督の前に白竜くんが滑り込んできた。
白竜くんはボールを足で受けると、
歯を食いしばり、険しい表情でシュートを打ち返す。
「ひぇっ」
打ち返されたボールは私の髪を掠めて、
反対側のゴールに飛んで行った。
驚いて硬直していると、
白竜くんが目の前に立って私を見下ろす。
「――何故だ。
何故お前が剣城の技を使える？」
剣城さんの必殺技“デスドロップ”。
私が放ったシュートは部室の映像データで見たことがあった。
だけど私にも何が何だか分かっていない。
だって“あの話”は松風さんだけだと思っていたから。
松風さんの必殺技“そよかぜステップ”が使えたのは
それが原因だったから。
ということは――――。
「答えろ、A」
「……受け継いだんです、剣城さんから」
「っ！？」
多分その言い方が最善。
見よう見まねで簡単に習得できるものでは無いし、
本人に教わるような時間も無かった。
嘘をつくのは困難、
それならこの言い方が無難だろう。
「どういうことだ……？」
円堂監督が白竜くんの横に立つ。
私は立ち上がって「そのままの意味です」と答えると、
2人は困惑したように顔を見合わせた。
「私がサッカーを始めたのは……。
彼らがサッカーをしていた証を、
私が受け取ったことに気付いたからなんです」
雷門中サッカー部の名を残すという目的が大前提。
だけどそれは後付けで、
元は松風さんの必殺技がきっかけで本格的にサッカーを始めたのだ。
「……それなら、
サッカーを誰に教わっていた訳でも無いはずのお前が
やけに上手いのにも説明がつくな」
「――え？」
さっきの違和感が一気に姿を現した。
思わず目をぱちくりとさせると、
白竜くんは不思議そうな顔をする。
「それは関係なくて……。
白竜くん、もしかして聞いてない……？」
「何をだ？」
あれ、おかしいな……。
てっきり話が伝わっているものとばかり。
「――私のサッカーの師匠はフェイくんとシュウくん。
特にシュウくんからは色々と教えて貰いましたし、
私は向こうでずっと特訓してたんですよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき(プロフ) - 麻衣蘭さん» ありがとうございます、やっぱり最後は大事なので気合を入れました。ですが流石にちょっと遠回しな書き方しすぎたかなと思い始めましたね…。改めて、読んでくださってありがとうございました！ (2019年8月5日 17時) (
レス) id: 2211deb5ec (このIDを非表示/違反報告)
麻衣蘭(プロフ) - 最初見つけて、面白くて一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます。最後の4つ。物凄かったです。言葉にならない…霧野君がもしキャプテンだったら、などとこのシリーズ全てに感動しました。イナイレもカゲプロも好きだったので読んでいて面白かったです。 (2019年8月5日 10時) (レス) id: 59f2026080 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ユマ♪さん» ありがとうございます！カゲロウデイズとカゲプロを知らなくても読める話とはいえ、カゲプロを知っている人にしか詳細が伝わらない要素が1つあったので両方好きな方に読んでいただけて嬉しいです。 (2019年7月27日 14時) (レス) id: 0972111bc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユマ♪(プロフ) - 完結お疲れ様です！初めから読んでいてたのでとても楽しみにして待ってました！！私はイナズマもカゲプロも好きだったので楽しめました！改めまして、本当にお疲れ様でした！！ (2019年7月26日 10時) (レス) id: 203861a7f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 雪猫さん» 読んでくださってありがとうございます！"そういう状況になった理由"に関しては作中で仄めかしているのですが、その先『この状況の中で選ばれるのは誰か』はただ単に私個人の予想です。一部種明かしをしていない謎もあるので、その部分はご想像にお任せします。 (2019年7月21日 13時) (レス) id: 0972111bc7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき | 作成日時：2019年6月27日 14時
