月明かりを写す ページ22
夕餉が終わり刀剣達もゆっくりと休む時間。
外をみれば月明かりが照らす静かな縁側。
明るい部屋の中とは違った印象のなかにぽつりと佇む一振りの刀剣。
「一人で飲んでいるんだね。山姥切くん」
「…あんたか…」
隣いいかな？と声をかければ、俺に構うなんて物好きな奴だなと帰ってきた。にこやかに彼の隣に腰をかける。
布からチラチラと見える彼の顔をじっと見ると、視線に気付いたのか彼は問いかけてきた。
「…なんだ、人の顔をじっと見つめて…」
「いや、綺麗だなと思って…」
率直な感想。彼は顔を隠しいつものように綺麗とか言うなと呟きながら下を向く。部屋の中では陸奥守さんの楽しそうな笑い声と加州くんと大和守くんのいつもの言い争いなどが聞こえる。
大倶利伽羅でさえ久し振りの再開した光忠さんと飲んでいるんだと思う。
「…みんな、楽しそうだよ？堀川くんとかと一緒に飲まないの？」
「…写しの俺が名のある銘刀と一緒に飲むなど…あいつらも気を悪くするだけだ」
最初出会ったときから思ったんだけど…山姥切くんはかなりのネガティブだ。
「…そんなことないと思うけどな…みんな仲間思いだし。山姥切くんのこと嫌悪する刀剣(ひと)なんて居ないよ」
私の言葉にちらりと私の顔を見ると
「…どうせあんたもそのうち写しの俺に目もくれなくなる」こう言うと彼はふぃと目線を背けた。
「そんなことしないよ…どんな山姥切くんでも見捨てるようなことはしない。それに、人に人それぞれの人生があるように、どんな刀にもそれぞれの刃生がある。それは私よりも長くこの世界にいる刀剣達(みんな)が一番わかってると思うけど…刃生ってさ悪いことばかりじゃないんだと思うよ？山姥切くんってよく「綺麗とか言うな」とか言うけど、私は山姥切くんとても綺麗だと思う…でもそれはね、山姥切の写しとして…芸術品としてだけじゃなくて、山姥切くんが顕現してから今までの行いや戦いぶりを見て、流石は国広一の傑作なんだ…って自然に思えたんだ…写しとして作られても、山姥切国広(あなた)はたった一降りしか居ない…自慢の刀だよ」
だから、自信持って良いんじゃない？と山姥切くんに素直に伝える。すると彼はまた布を深く被り「他の刀剣(やつら)にも言っているのか？」と聞いてきた。
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作者名：セローナ | 作成日時：2017年3月8日 0時
