戦場にて2 ページ13
「ただ、五郎八姫(いろはひめ)は…ちょっと…」
「あぁ…」
確かに男子の名前しか決めておらず、男子が産まれなかったからと言って…女子に男子の名前をつけるとは思ってもいなかったこと…
しかし主もわかっていたらしい。伊達政宗が悪気があって付けてはいないことを
「名前の由来はわかるの…自分自身が大病患って、親からもらった片目を失って…そのせいで母親から…子供にそういう思いをしてほしくなかったんだろうなって…」
「世継ぎを生むことが、その当時の女の役割だったからな…男児の名前しか決めていなかったのは仕方のないことだろう…だからと言って伊達政宗(あいつ)は最後まで五郎八姫を大切にしていた」
刀だからこそ、当時のことを見守ることが出来た。
時には戦場で、時には本丸で…
いい意味でも、悪い意味でも…
まぁ、俺が来たときには戦は終わっていた。この話はまぁ聞いていた。
「大切な人だったんだね…大倶利伽羅さんにとっても」
呟くように言う主。
「俺は馴れ合うつもりはない。だから大切なものなど…ない」
頭に思い浮かべたのは３振りの刀。
違う、俺はもう、馴れ合うつもりはない。その方が…
「ーーさん…大倶利伽羅さん」
「っ！？…なんだ」
「さっきから急に黙っちゃってるから…どうかした？」
「別に…あんたには関係ない」
「関係なくないよ…だって…今は貴方の主だから」
突然、主が近くに来たと思ったら柔らかい感触と共に腕をまわされていた。
正確には抱き締められているのだろう。
「(これは…どうすれば…)」
「私、貴方達にしてあげられることが少ないから…こんなことぐらいしか出来ないけど…でも貴方達が辛い思いがあると言うのなら…私は助けになりたい…」
主なりの配慮と言うやつなのだろう…俺は暫く、それに付き合うことにした。不思議と主に触れられるのは嫌いじゃない。
猫達とはまた違う温かさと柔らかい体は俺の体と全く正反対だ。更にどこか甘い香りが漂ってくる。
今まで体験したことのない現状。
少しだけ、ほんの少しだけだがこのままで居たいと思った。
こんなにも安心するものなのか？
それとも…
「隊長？」
「…なんだ」
「いえ、立ち止まって如何しましたか？」
「…別に、なんでもない…目的は達成した。帰るぞ…」
「…そうですね、早く本丸に帰還いたしましょう」
これ以上のことは考えないでおくのが身のためだな…
俺は一人で戦い、一人で死ぬ。それだけなのだから…
大倶利伽羅side終
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作者名：セローナ | 作成日時：2017年3月8日 0時
