戦場にて…大倶利伽羅side ページ12
…出陣の最中で後ろの平野が刀を二本拾った。見るからに短刀だろうと予測は出来る。
別に俺はそんなのはどうでもいい、戦いは俺一人で十分に戦える。一人で戦い、そして一人で死ぬ。死に場所は俺が決める…それが俺だ。
だが、頭の片隅であいつが喜ぶ姿を思い浮かんだ。
そして、後ろをチラリと見れば両手が塞がっており、今敵が来たら攻撃できる状態ではなかった。
こいつが破壊されようが俺は関係のないこと…だが、あいつは…
舌打ちをするといきなり立ち止まり、後ろを振り返る。平野は一瞬怯むも「なんでしょうか？」と訪ねてくる。俺は右手にあった刀を取り上げた。自分の腰に差し込むと、また先程進んでいた道を歩き始める。
「あ、ありがとうございます！」
後ろの方で声が聞こえた、そんな言葉に
「勘違いするな、俺の足手まといになられると困るからしただけだ。あんたのためじゃない」
素っ気なく返した言葉。
それでもあいつは
「それでも、隊長を補佐して頑張ります！」
「…勝手にしろ、俺は馴れ合うつもりはないからな」
俺は放っておくことにした。平野(こいつ)は俺に無駄に話しかけてこない。あの主と同じように、必要最低限のこと以外しないため。基本好きにさせている。そう言えばあいつも俺を近待にさせていながら、無理やり傍に居させることはなかった。
あのもふもふによると近待は主の補佐役として、資源の管理、他の奴の状況等を把握しておかなければならないらしい。
だから他の本丸の奴らは常に主の傍にいるらしい。
だが、主は俺を好きにさせている。
俺がどこ行こうにも主は文句ひとつも言わない。
言われたことをやっただけなはずなのに、わざわざ労いの言葉までかけてくる。
だが、全く関わらないと言うことは無かった。
いつだったか、気まぐれに主の傍に居たときの主は
「大倶利伽羅さんって伊達政宗様の刀だったんだよね？伊達政宗様ってどんな方だった？」
「なぜそんなことに興味を持つ？」
「何となくかな？それに私伊達政宗様のこと尊敬しているから…」
前の主のことなどなぜ今更聞くのか、よくわからなかった。馴れ合いはしないが俺から見た伊達政宗を掻い摘んで主に聞かせる。
主は俺の話を楽しそうに聞いていた。
俺は「そんなに好きなのか？」と聞いてみたところ本当に好きなようだ…
俺には関係のない話だがな、だが、少し目尻を下げてこうも言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セローナ | 作成日時：2017年3月8日 0時
