vol.51 ページ9
「え……急に出来るかな、俺。」
「無理はしなくていいけど、俺はこっちの方がいい。だって『友達』だもん。」
ね？と促すと少し歯切れ悪く「うん」と返事をした。
俺はまた箸を手に取って少しずつ、ご飯を口に運んでいく。
「ははは、付いてる。」
一気にかきこんだ訳じゃないのに、彼は頬を指さした。
うわ恥ずかし！と急いで頬に手をやるも、見えないからどこか分からない。
棚にティッシュがあることを知っている彼はティッシュで丁寧に頬を拭ってくれる。
「取れたよ。以外にお茶目なところもあるんだね。」
・
・
「それで、さっきの話だけどね。」
「うん。」
ついさっきまで敬語で話していたとは思えない距離感に、慣れてしまった自分がいた。
もうずっと昔からこうして友達だったような心地よさがあった。
「暗い話だけど、ずっと自分が死んだら楽になれるのかなって思ってた。」
「それって、」
「でも周りの人に迷惑を掛けたくない、それを言い訳にして死ぬことすら出来なかった。」
死ぬことが怖い。
弱みを握られるようで誰にも言えなかったそれを、彼は口に出した。
生きる事にも死ぬ事にも臆病で、前にも後ろにも進めなくて。
どうにか自分の居場所を探そうとするけれど、どこにも見当たらなくて。
それがずっと、俺だけだと思っていた。
だけど違った。
この病室の中に居ても、外に居ても変わらないことがある。
自分が変わらなきゃ、変えられないこともある。
「そんな時に伊野尾さんに出会って、たくさんの勇気を貰って。」
「そんなの、俺だって…」
「だからこそ、生きる事を諦めるなんて悲しい言葉、伊野尾さんの口から聞きたくなくて。」
たくさんの勇気。
俺が、薮さんに？
そんなの、言われるまで分からなかった。
俺はいつも助けてもらうことしか出来なくて、本当はみんな俺のこと嫌ってるんじゃないかって。
そんな不安に押しつぶされそうになった時、唯一の支えが『青空日和』だった。
俺の知らない世界の、俺が唯一迷惑を掛けなくて済む心の拠り所。
それなのに俺はそんなfineさんに、薮さんにまで救いの手を求めてしまった。
もう薮さんにも迷惑を掛けたくなくて。
俺の『唯一』の場所がどこにも存在しなくなって。
だったらもう、いなくなっちゃえばいいのかなって。
そんな軽い気持ちで死を悟ったフリをして。
内心は怖くて毎日震えていた。
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天凪(プロフ) - Blue Whiteさん» たくさんの嬉しいご感想ありがとうございます。そんな風に思っていただけるだけでも幸いです。お礼を言うのはこちらの方です。本当にありがとうございます、これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2017年9月9日 0時) (
レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - blue catさん» こちらこそ素敵なご感想ありがとうございます。最後まで読んでくださって、更にはご自身の体験に重ねて考えていただけるなんて本当に光栄です。このお話が何かのきっかけになれば幸いです。応援しています、頑張って下さい！ (2017年9月9日 0時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
Blue White(プロフ) - はじめまして。このお話はすごく文章が綺麗で、物語にのめり込みながら読んでいました。とっても感動できる作品でした。「ありがとう。」って言いたいです。これからも頑張ってください。応援しています。 (2017年9月7日 18時) (レス) id: 96f5815679 (このIDを非表示/違反報告)
blue cat(プロフ) - 本当に感動しました！！私自身、ずっと”才能”という言葉に囚われていました。今でも、逃げてしまいたくなるくらい、泣きたくなるくらい、周囲との力量の差を感じることがあります。でも、この小説を読んで自分の気持ちと向き合おうと思いました！有難うございました！ (2017年9月3日 20時) (レス) id: 2b68782549 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - くるみさん» お返事遅くなってすみません…！嬉しいご感想本当にありがとうございます。皆様の応援あってこその作品でした！またいつでも覗きに来てくださいね！ (2017年6月6日 18時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
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